2008年1月28日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

学校図書館

子と本つなぐ司書


 図書司書がいなければ、学校図書館は本の倉庫にすぎないといわれています。司書を小・中学校すべてに配置している熊本市と、東京都狛江市の例を紹介します。


全117校に配置 温かい交流の場

熊本市

地図

 熊本市(くまもとし)では、二〇〇〇年度から、すべての小中学校の学校図書館に、「学校図書館司書業務補助員」として図書司書が一人ずつ配置されています。

 「すべての小中学校に、図書司書を」の願いは、「熊本市の学校図書館を考える会」など市民団体から議会や行政に繰り返し要望され、党市議団としても、遅れていた蔵書の整備率向上とともに、司書の全校配置を議会で取り上げ、実現を求めてきました。

 一九九五年にモデル事業として小学校三校・中学校二校に配置されて以降、順次拡充され、二〇〇〇年度には小学校八十校・中学校三十七校、合計百十七校すべてに配置され、現在に至っています。

 年間事業費は約九千万円、一日五時間勤務の臨時職員で、学期ごとの任用できますが、ほとんどが一年間の任用で、更新は五年までです。(日当三千八百五十円・年間約二百日)

読書も活性化

 採用には、司書または司書教諭の資格を条件とはしていませんが、現在、約六割が司書などの有資格者です。新任補助員の研修が年二―三回、全員が受ける研修が四回程度、そのほかに希望者研修が二回ほど開かれ、コンピューターのシステム操作、図書館便り作製などをはじめ、図書館業務に必要なことを学び、資質向上が図られています。

 「司書業務補助員」の配置によって学校図書館は生まれ変わりました。いつも「人」がいる温かさが感じられ、子どもたちが「補助員」の笑顔に迎えられる、生きた交流の場になりました。本がきれいに整理され、古いラベルは張り替えられ、子どもたちが喜びそうな本が手に取りやすいところに移されました。

 学校主事と協力して、使いやすい本棚や表示もオリジナルに工夫され、すてきな雰囲気になりました。図書館の中はもちろん廊下にも、手作りの掲示板がかけられ、本の紹介やその時々に子どもたちが興味を持つような資料、教科書に出てくる本の紹介など、図書に関する情報が掲示され、子どもたちを本の世界に誘っています。

 事業実施から七年、制度もすっかり定着し、子どもたちへの貸出冊数も伸び、読書活動の活性化に貢献しています。また、二〇〇四年度から実施された「学校図書館資源共有ネットワーク事業」と併せて、図書館運営のシステム化・効率化も図られています。

総合学習へ対応

 授業との関係でも、調べ学習など「総合的な学習」への対応も効果的になっています。いくつかの学校では、お昼休みを利用して、図書ボランティアによる読み聞かせなども実施されています。

 今後は、図書標準に対する蔵書整備率の遅れを達成するための図書購入予算の拡充や、「補助員」の専門性確保のため、最長五年の任期条件廃止や勤務時間の延長、臨時でなく正規雇用の職員を配置するなど、より専門性の高い業務提供への改善が課題です。(上野美恵子市議)


図

学校の枠超え蔵書活用

東京都狛江市

 学校図書館での一人当たりの年間貸出数が、小学生一・八倍、中学生一・九倍(グラフ参照)。東京都狛江市(こまえし)で進めている学校図書館事業で、大きな成果をあげています。二〇〇〇年に実現した全小・中学校(小学六校、中学四校)の図書館への司書職員配置の成果を土台に、学校図書館と市立図書館をコンピューターネットワークで結び、学校の枠を超えて蔵書を活用する事業です。

 「学校図書館資源共有ネットワーク推進事業」(文部科学省のモデル事業、二〇〇四―〇六年度)といいます。

表

市民と協力して

 学校関係者でつくる組織のほか、市全体で読書活動を推進するため、学校長や市立図書館職員、市民も加わった学校図書館有効活用推進委員会もつくりました。具体的には、蔵書にバーコードをつけてデータベース化し、本の検索や貸し出し業務にパソコンを導入。週二回の本の配送システムも確立し、図書にかかわるボランティアの人材育成も進めました。

 各学校は、調べ学習に取り組む「情報活用指導」と読書活動に取り組む「読書指導」の二つの分科会に分かれ、年間計画を立て、手引書や推薦図書リストを作成。読み聞かせや語りの市民ボランティアの参加も積極的に行われました。公開した実践授業は、三十回にのぼります。この取り組みを通して、各学校間を動く本は倍加しました。

自ら調べる姿勢

 各学校では、取り組みの成果として「わからないことを自ら本で調べて解決しようという姿勢の喚起」「読書をする児童の増加、読書量の増加が見られた」「保護者の協力、公民館図書室との連携が深まった」「図書室を身近に感じ、利用する生徒が増えている」などをあげています(事業の取り組みをまとめた市教育委員会の冊子から)。市教育委員会も「読書活動を大きく飛躍させることができた」としています。

 狛江市は、矢野ゆたか市長が一期目の一九九八年度から各小・中学校に司書職員を順次配置し、二〇〇〇年度に都内二十六市で二番目となる全校配置を実現。〇二年度からは、市立図書館と各学校間の蔵書を運ぶ週一回の配送システムを導入しました。司書は臨時職員ですが、今年度から週四日、一日四時間だった勤務時間を同五時間にするなど、充実を進めています。

 同市は、いっそうの充実を目指し学校図書館の利用状況を調査・研究し、貸出数の増加をはかる学校図書館支援センター推進事業(文科省モデル事業)を新たに始めます。

 学校図書館への司書職員配置など、子どもの読書環境の改善を求める運動に取り組む「狛江の学校図書館を考える会」の市川光代代表は、「市民との対話を大切にする矢野市長は、学校図書館についても理解を示し、事業を進めてくれています。専任専門の優れた司書職員のみなさんの努力や先生方の理解の広がりもあって、豊かに展開されるようになった学校図書館の活動を、さらに充実させてほしい」と話しています。(東京都・長沢宏幸)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp