2008年1月27日(日)「しんぶん赤旗」
これで世界は「先導」できない
福田首相の「温暖化」講演
地球温暖化問題で世界を「先導」する…。福田康夫首相は十八日の施政方針演説で、こう見えを切り、ダボス会議に臨みました。ところが、そこで提起したのは、京都議定書の約束期間が終了する二〇一三年以降の温室効果ガス排出削減で「国別総量目標を掲げ」ることだけ。温暖化防止のために急務である二〇年までの中期目標に関しては、世界全体としての目標設定の必要に言及せず、日本の目標数値も示しませんでした。
世界の科学者を結集したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が昨年発表した報告は、温暖化の破局的影響を回避するには、▽工業化以前からの温度上昇を二度以内に抑える▽そのため先進国全体の二〇年までの排出量を一九九〇年比で10―40%削減する―などの必要があることを確認しました。
同報告を受けて昨年十二月の気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)では、「先進国が二〇年までに九〇年比で25―40%削減する」目標が提起されました。しかし日本は米国とともにこれに反対し、この数値目標は決定文書に盛り込まれませんでした。
気温上昇を二度以内に抑えるには、大幅な総量での削減数値目標を掲げ、そこから逆算方式で中期目標を設定し、その実現にあらゆる手段を尽くすべきです。欧州連合(EU)は、この方式で削減実績をあげ、二〇年までに九〇年比で20%削減する目標を掲げ、新たに国別削減数値目標を設定するなどして確実に達成しようとしています。
これに対して福田首相がダボス会議で提起したのは、エネルギー効率などをセクター別に割り出し、技術開発に基づき削減可能量を積み上げて目標を設定する方式です。これは、産業界の「自主計画」任せにし、総量削減目標の達成に責任を負わない日本国内でのやり方を「世界標準」にしようとするものです。それでは、世界全体と各国で総量規制の数値目標を義務化する京都議定書の方式の放棄にならざるをえません。
しかも、「自主計画」積み上げ方式から離脱できない日本は、京都議定書の6%削減さえ達成のめどがありません。
ダボス会議でデ・ブア枠組み条約事務局長は、各国政府は「小さな積み上げ的措置」を捨て、三〇年までに温室効果ガス排出ゼロを目指すと表明したノルウェーのように「大胆になれ」と訴えました。大胆な決断なしに、ブッシュ米政権や日本の大企業の顔色だけをうかがう小心な「足して二で割る」式の提案をいくら積み重ねても、温暖化防止で世界を「先導」できません。(坂口明)
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