2008年1月25日(金)「しんぶん赤旗」

核兵器ゼロ 新たなうねり

元米高官らの訴えに反響

「交渉に戻れ」と専門家


 米国のキッシンジャー元国務長官らが「核兵器の廃絶」を訴えていることに反響が広がっています。軍縮・平和問題の専門家でエール大学で教べんをとるジョナサン・シェル氏は、キッシンジャー氏らの活動にも触れ、核兵器廃絶に向けた見通しについて、米誌『ネーション』(二〇〇七年十二月二十四日号)に論考を寄せています。


写真

(写真)被爆者の証言を聞く米国の中学生たち。広島県原爆被害者団体協議会の代表団が訪米して訴えました=昨年10月26日、米コロラド州ブルームフィールド(山崎伸治撮影)

 シェル氏は、元米高官四氏が「核兵器の廃絶」を訴えていることに注目し、「彼らのほとんどは、最近まで核廃絶という考えを、議論の余地なく空想的で無邪気なものとして拒否してきた」と指摘。「問題の多い時代に、われわれ共通のヒューマニティーというものを思い起こすことができる話題が依然としてあるということは、希望があるということだ」とのべています。

 また、米大統領予備選で、何人かの民主党候補者が核兵器の廃絶に向けたイニシアチブを主張していることについて、「希望的な兆候」と評価しています。

 その上でシェル氏は、米ソ対決時代の核問題について歴史を振り返り、レーガン元米大統領が一九八四年の一般教書演説で「(核兵器を)まったく廃止してしまった方がより良いのではないか」とのべたことが、「冷戦下でやっとのことで得た、最も奥深い教訓の一つだ」と指摘。しかし、ソ連崩壊後も核廃絶は達成されるどころか、「核の新しい危険性が明るみに出ている」と警告しました。

 シェル氏は、現在の核兵器をめぐる問題の教訓として、「爆弾技術というのは、能力のある製造者には入手可能であり、遠くない時期にテロリスト集団が含まれるかもしれない」として、核拡散問題の深刻さを指摘。「今日われわれは、武力で核拡散問題を解決できるという幻想を捨て、(核廃絶に向けた)交渉に立ち戻らなければならない」と訴えています。

 シェル氏は今日、核兵器廃絶をめぐる議論が比較的弱いと問題提起。それでも、米国でかつて核凍結運動にとりくんだピースアクションのメンバーがいまや十万人を超え、反核運動の長い歴史をもつ団体がいっそう努力を強めていることを指摘。こうした団体が核廃絶に向けて協調すれば、「強力な政治的勢力となるだろう」とのべ、「しかし、それは自動的には起こらず、つくられなければならない」と呼びかけました。

 シェル氏は、メリーランド大学の研究所が行った最近の調査でも、アメリカ人の73%が核廃絶という目標を支持しているとして、「反核感情がさらに高まるならば、想像するよりも早く、世界の核保有国が、反核世論に従うことになるだろう」と締めくくっています。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp