2008年1月25日(金)「しんぶん赤旗」

温室ガス削減数値

EU、加盟国に義務化

新提案 排出権取引を拡充


 【パリ=山田芳進】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のバローゾ委員長は二十三日、EU加盟二十七カ国に対し、温室効果ガス排出量削減目標達成のため、各国に数値目標順守を義務付けるほか、企業の温室効果ガスの排出権を売買する排出権取引制度(ETS)を拡充・強化する計画を発表しました。


 ETSは、京都議定書の期限の二〇一二年後の一三年からは二酸化炭素(CO2)を最も多く排出する電力分野だけでなく化学産業やアルミなどのより多くの工業に拡大されます。CO2以外の他の温室効果ガスも含まれ、EUの温室効果ガス全体の40%をカバーすることになります。

 ETSの対象外の運輸、建築、公共事業や農業などの分野の排出は、二〇年に〇五年の平均10%の削減が求められます。

 この計画に対しては、企業からの反発も予想されます。

 〇五年時点で年間二十億トン以上の二酸化炭素を排出していた企業は、今後21%削減しなければならず、計画の実施には、毎年少なくとも六百億ユーロ(約九兆三千億円)かかるとみられています。

 バローゾ委員長は「確かにコストはかかるが、何もしないことで生じるコストと比較しなければならない。それははるかに高いものであり、この提案は勝利を意味するといえる」と強調。欧州議会と加盟国が、年内に合意することを望むとのべました。


解説

日本政府、消極姿勢なら孤立

 欧州連合(EU)欧州委員会が二十三日に提案した温室効果ガス削減の新対策案は、二〇二〇年までの中期目標として一九九〇年比で20%削減するというEUの昨年の決定のいっそうの具体化を目指すものです。

 七月の洞爺湖サミットに向け温暖化対策で世界を「主導」すると表明した福田康夫首相は、スイスでの世界経済フォーラムで二十六日、日本政府の態度を表明します。しかし、その中身は、数値目標を明示せず「積み上げ方式」で中期目標を設定するだけのものだと報じられています。排出量取引にも言及せず、「五〇年に排出量半減」という首相の掲げる目標の実現を裏付ける具体策はありません。

 高い数値目標設定や排出企業の責任の明確化に背を向け続けるならば、日本政府は世界での孤立化を深めるだけです。(坂口明)



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