2008年1月19日(土)「しんぶん赤旗」
UR(都市再生機構)民営化でどうなるの?
〈問い〉 URの民営化が話題になっていますが、とても不安です。これ以上家賃が上がると住み続けられません。民営化は何をねらっているのですか。将来どうなっていくのでしょう。(東京・一読者)
〈答え〉 昨年末、UR(都市再生機構)は、「賃貸住宅ストック再生・再編方針」を発表しました。
“郊外に大量供給された住宅が老朽化・陳腐化、人口・世帯数の減少で需要低下、入居者が高齢化し過半が低所得者”となっていることを理由に、現在の77万戸の賃貸住宅のうち、10年後に約10万戸を再編、約5万戸を削減、さらに将来は3割を削減するというのが、大筋のシナリオです。
団地別に「団地再生」「ストック活用」「用途転換」「土地所有者等への譲渡、返還等」に類型化する作業を終えて、順次団地自治会に説明会をおこなうとしています。またこの削減方針を「円滑」にするための「支援制度」も2008年予算案に具体化されています。
この「再編方針」は、居住者不在の密室で決められたもので、作業過程の「内部文書」が本紙および一部週刊誌にスクープされ、居住者による反対運動が展開されました。
「再編方針」は「規制改革会議」の財界代表やそれを応援する学者によって、「UR賃貸住宅事業は廃止し民間に任せよ」、「削減し、空いた土地を民間に売却せよ」、「URは福祉政策をおこなうべきではない」などの理不尽な要求を丸のみする形で、閣議決定された「独立行政法人整理合理化計画」の実行といえます。
同時に独立行政法人の「整理合理化」の名で都市再生機構は民営化のターゲットになりましたが結果として、民営化を含めた組織見直しを3年先送りしました。
しかしこの内容を示さないままの無謀な民営化推進は火種を残したばかりか、その具体化が進行しています。何よりも今回の再編方針はその“地ならし”ともいえるものです。
まず民営化の狙いは17兆5千億円に及ぶ都市再生機構の資産にあります。なかでも財界・大企業は都心にある一等地に建つ団地を民間再開発の種地にしようとしています。
「再編方針」はその具体化であり、両者は一体のものです。そのためにスリム化し現在の5000億円に上る累積赤字を減らすメドを表明することにより、スムーズに民営化に移行しようとしているのです。
利用のメドがない遊休地を他用途利用するならまだ理解できるものの、日々生活している賃貸住宅とその用地をその対象にすることは許されるものではありません。
今回の「再編方針」と民営化について機構および国土交通省当局は徹底した情報公開をおこない、住民にたいする納得ある説明をすべきです。(高)
〔2008・1・19(土)〕