2008年1月18日(金)「しんぶん赤旗」

環境団体に賠償請求権

フランスで初の司法判断


 【パリ=山田芳進】パリ軽罪裁判所は十六日、タンカー事故による重油流出で生じた環境破壊の責任を荷主企業などに認める判決を出しました。環境的損害を認めた初めての判決に、原告の環境団体などは「画期的」と歓迎しています。

 一九九九年十二月、仏西部のビスケー湾沖で沈没した運搬船エリカ号から漏れ出した約二万トンの重油が沿岸四百キロに広がり、十五万羽以上の水鳥が死んだほか、漁業、観光などに多くの損害を与えました。

 昨年二月に沿岸自治体や環境保護団体などが、重油の所有者である仏石油最大手のトタル、運搬船エリカ号の所有者、管理者、検査機関の四者を相手に十億ユーロ(約千六百億円)の損害賠償を求める訴えを起こしていました。

 判決は、トタル社に対し運搬船の老朽化などを考慮に入れなかった「軽率さの過失」を認めるなど、被告四者に一億九千二百万ユーロの損害賠償を支払うよう求めました。

 また判決は自然保護団体に対し、その団体が守ろうとする公益への物質的・精神的被害だけでなく、環境破壊の結果引き起こされる損害を理由に、損害賠償を請求する権利を初めて認めました。鳥類保護連盟は、犠牲になった水鳥への補償を名目とした三十万ユーロを含む八十万ユーロの賠償を受け取ることができます。

 この新たな判例により、民間団体だけでなく自治体や国も、環境破壊を理由にした裁判を起こしやすくなると法曹関係者はみています。



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