2008年1月7日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

NPO法人 POSSE(ポッセ)

使えるじゃん 労基法

仲間といっしょに 格差に立ち向かう


 「企業の奴隷になるのはごめん。企業に法律を守らせよう」。フリーターや学生らが立ち上げた「働く問題」に取り組むNPO法人POSSE(ポッセ)が注目されています。格差社会に立ち向かう若者たちが手にしているのは「法」と「仲間」でした。平井真帆


 POSSEとは、ラテン語で「力を持つ」という意味。英語のスラング(俗語)では「仲間」という意味でも使われています。

 2006年6月に発足後、月に一度、弁護士を招いて労働法などを学ぶ「カフェイベント」を開催したり、労働相談にとりくんでいます。

 メールや電話を通じて「不当解雇」や「賃金不払い」など、毎月十数件の相談が寄せられています。相談に応じてユニオンを紹介したり、行政に一緒に行くなど解決の手助けをしています。

 会員は現在、約160人。活動する青年から最も多く聞かれた動機は、「こんな働き方はおかしい。自分にも何かできることがあれば」。

カルテ

 2006年の夏、POSSEは、のべ60人ほどの協力を得て、「若者『シゴト』3000人調査」を実施しました。対象は15歳から34歳までの「働く青年」。その結果に代表の今野晴貴さんたちは、がくぜんとしました。

 調査した若者の半数以上が「労働基準法」の具体的中身を知っているにもかかわらず、知らない青年との間には、有給休暇取得率や残業代の支払いに、ほとんど差が見られなかったのです。青年は法律を「知らないから使えない」のではなく、「知っているのに使えなかった」のです。

 「法律にはこう書いてあると、いくら教えられてもそれだけではだめ。一人じゃ使えないし、使い方がわからない」。労働法の中身を知らせることと同時に、「法律を使わなければ。使い方を教えなければ」。今野さんたちの強い確信でした。

 POSSEでは「しごとカルテ」を使って、まず問題を一緒に発見することから始めています。簡単なクイズに答えていくうち、「労働者の権利」に気がつく仕組み。

 「明日から来なくていい」と言われた場合、「なぜ辞めなければいけないのか理由を説明させ、1カ月分の給料を請求することができる」と知ると、多くの青年が「え! 1カ月分ももらえるの?」と驚きます。

 もうひとつ、普及に力を入れているのが『しごとダイアリー』。シフトや労働時間のほかに「気になったこと」などを書き込める手帳です。「ダイアリー」にそって日記をつけているだけで、万が一、裁判になった場合、メモが重要な法的証拠になるのです。

まさか

 昨年12月16日、クリスマスを前に若者でにぎわう東京・渋谷でPOSSEは、街頭労働相談「ジョブ☆クリ〜しごとの悩み、サンタさんに相談しよう〜」を行いました。

 神奈川県座間市の安藤雅幸さん(25)=仮名=は「初めてイベントの手伝いをした」と話します。POSSEにかかわるようになったのは「格差社会に対する怒りがあったから」。安藤さんは派遣会社に登録し、仕事先を転々としていました。

 安藤さんが紹介された医療機器の製造工場に勤めていたときのこと。2週間たったある日、仕事が終わると派遣会社から電話がかかってきました。「悪いけど、今日限りでやめてもらいます」。「それはないでしょう」と詰め寄る安藤さんに派遣会社のスタッフは、「2週間は試用期間だった。あなたには向いていないのでやめてもらう。2週間以内の試用期間なので解雇予告は必要ない」と。

 「こういうことがあるのは知っていました。まさか自分がやられるとは、とショックでした」。そんな思いでいたとき、ネットでPOSSEを見つけ、イベントに参加するようになりました。

問題は

 「問題を問題だと思えないところが問題」。今野さんたちはそう考えています。例えば賃金不払いがあっても、「自分が上司とうまくいっていないから給料を払ってもらえない」と思ってしまう。「最近、うつっぽいんです」と悩む青年に理由をたずねると、「給料をもらっていなくて落ち込んでいるんです」―。多くの青年は、企業からの不当な扱いを「自己責任」、「人間関係のもつれ」と、とらえてしまうのです。

 今野さんは言います。「今まで企業は、法律を守らなくてもいいっていうのが当たり前だった。最たるものがサービス残業。圧倒的な力を持ち、しまいには企業が『法律の方が悪いんだ』と言い出した。僕たちは『法律を守らない企業が悪い』という当たり前のことを主張していきたい」

グラフ

しごとカルテ

Q1,時給1000円の人が8時間を超えて働いたら、その分の時給はいくら?

  A 1000円〜1250円

  B 1000円のまま

  C 1250円

  D もらえない

Q2,バイト中に皿を割ってしまった! 店長に謝っただけで済む?

  A その場で皿の代金を支払う

  B お金を払う必要はない

  C その月の給料から差し引かれる

  D 同じ皿を買いにいく

Q3,バイトでも有給休暇はもらえる?

  A イエス

  B ノー

Q4,あなたの給料は何分単位で計算されなければならない?

  A 1分単位

  B 15分単位

  C 30分単位

  D 1時間単位

 しごとカルテの正解 Q1=C Q2=B Q3=A Q4=A

 ホームページ(npoposse.jp)もご覧ください。連絡先 03(5779)1890


お悩みHunter

仕事も続けたいけどお母さんのこと心配

  以前からやりたかった出版関係の仕事につくために最近、上京してきました。長男である僕を頼っていた母は不安定になり、うつ病になってしまいました。

 父も母も内心、僕に帰ってきてほしいようです。母のことは心配ですが僕は今の仕事を続けたいのです。(23歳 男性 東京都)

気持ち伝え、両立の道探して

  仕事も続けたいけど、お母さんのことも心配。これでは体がふたつ必要ですね。

 世間でも「仕事か家庭か」で悩む声をよく聞きますね。また仕事と家庭のことだけでなく、勉強や趣味やサークル活動などさまざまなことで、どちらを取るか悩む場面はありますね。

 ここでつらいのは、どちらを取るか選択をせまられることだと思います。当事者はどちらも大事に思い、一生懸命になっていてもなかなか理解してもらえなかったりします。

 あなたの悩みは、仕事を取るかご両親を取るか、このどちらを取るのかという問題ではないと思います。

 まずはあなたの仕事を続けたいという思い、そしてなによりも両親を残して上京したけど、いつも気にかけているということをご両親に伝えてみてはどうでしょうか。そのなかでご両親の気持ちもわかると思います。

 また、お母さんの具合が悪ければ頻繁に帰らなくてはならないときがあるかもしれません。そのときはこんどは職場の人に家族が大事だということを伝えてください。

 仕事を続けたいという思いも、家族を大事に思う気持ちも、両方持ち続けてほしいと思います。そしてひとりで悩まずにその気持ちを周りに伝えてください。

 ご両親もあなたの気持ちが伝われば、送り出してくれるのではないでしょうか。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


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