2008年1月6日(日)「しんぶん赤旗」

NAFTA発効15年目 メキシコ

食料守れと農民が行動

「トウモロコシなければ国滅ぶ」


 カナダ、米国、メキシコ三カ国の北米自由貿易協定(NAFTA)が発効して一日で十五年目に入りました。この日からメキシコの主食トウモロコシやフリホール豆などの関税も完全に撤廃されます。米国産農産物の輸入自由化に反対するたたかいが新年から各地で広がっています。(シウダフアレス<メキシコ>=松島良尚、写真も)


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(写真)「トウモロコシがなくなれば国もなくなる」のスローガンをかかげる農民ら=1日、シウダフアレス

 「トウモロコシがなければ国は滅びる。再交渉を通じNAFTAからトウモロコシとフリホールを除外せよ」―一日午前零時、メキシコ北部チワワ州シウダフアレスのコルドバ・アメリカ橋の中間点で農民ら百数十人が声を上げました。

人間の壁で阻止

 出入国管理事務所の向こう側は米エルパソ市。米農産物を積んだトラックを「人間の壁」で阻止しようという抗議です。真夜中でも国境を行き来する車は絶えませんが、橋は三十分間通行止めになりました。

 「トウモロコシもフリホールも売値はこの数年変わらないのに、生産コストは急上昇した。食べるだけの生活だ。若い連中はみんな国境を渡って出稼ぎに行った」とビジャさん(60)。隣接するドゥランゴ州で八ヘクタールのトウモロコシ畑を耕しているアコスタさん(54)は、「平均収入は九千ペソ(約九万五千円)ほど。家族六人がまともに生活するにはとても足りない」といいます。

 抗議行動は、チワワ州の民主農民戦線(FDC)を中心として、FDCら約三百団体からなる「食料主権と農業の再生をめざす全国運動」(以下、全国運動)がとりくみました。ほとんどの全国紙が一面で報じました。

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 NAFTAによってメキシコの対米輸出は急増し、米国は輸出の約八割を占める最大の貿易相手国になりました。

 農産物については、トウモロコシなどを例外品目とし、それらを関税ゼロで輸入できる割り当て数量を年々増やす一方、割り当てを超える輸入への関税を漸減してきました。一日からは量に関係なく関税ゼロです。

 米政府は農業生産者に一ヘクタールあたりメキシコの三倍の農業補助金を支給しています。もともと生産性が高い上に補助金に支えられ、メキシコの農家は太刀打ちできません。米国産トウモロコシの二〇〇六年の輸入は千七十万トン、一九九八年の倍以上になりました。

自給率は6割に

 全国運動によれば、NAFTA発効の九四年以来、農業分野で二百万人の雇用を失い、農村から年平均三十万人が不法移民として米国に渡りました。米国からの農産物輸入は年百億ドル以上の規模になり、食料自給率は九割から六割に低下しました。

 農民らの要求の中心は、NAFTA農業条項の再交渉、食用トウモロコシなどの輸出入管理です。カルデロン政権は耳を貸そうとしません。しかし、カルデナス農相は、農業生産性の停滞や、一部の農業関連企業などだけがNAFTAの恩恵を受けている農業分野の格差の広がりを認めています。

 農民らは年明け早々から、メキシコ市やモレロス州クエルナバカなどでも抗議行動を展開しました。今月末にはメキシコ市で大規模な集会も予定しています。

 「二〇〇八年はたたかいの年」―全国農民連盟(CNC)や全国農業生産取引業連合(ANEC)など各団体とも一致して決意を表明しています。


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