2007年1月11日「しんぶん赤旗」東海北陸版

補助金135億円、シャープ誘致の陰で

「経済効果」市民素通り

三重・亀山


 シャープ液晶テレビの工場が進出した三重県亀山市。誘致に市と県が支出した補助金は合計百三十五億円にのぼります。その「世界の亀山」の陰で、大企業優先、住民の暮らし後回しの地方政治が浮き彫りになります。(山形将史)


少ない学童保育所
遅れる中学給食
減る市営住宅

 「ただいまー」。授業を終えた子どもたちが学童保育所「くれよんくらぶ」にやってきます。すぐに宿題を始める子、ボールで遊ぶ子。おやつには全員が集まります。

 部屋は百十五平方メートルのプレハブ平屋です。「外に出られない雨の日は大変です。部屋の中を走って、ぶつかったり」と、指導員の男性(27)。

 市内の小学校十一校に学童保育所は四カ所だけです。その一つ「くれよんくらぶ」に通うのは六十一人。この四月からの申し込みは新一年生から六年生まで八十人前後が予想されます。

やることが逆

 市からの補助金は、国基準による市負担分と運営委託料で年間約百七十万円(〇六年)。これに国と県の分を合わせても運営費の四分の一以下です。残りは保育料(月一万一千円から六千円)などでまかないます。

 「国基準程度は珍しいです。市の規模にもよりますが四百万?九百万円の独自補助金をだしています。身近な行政が主体的に取り組むべき問題です」と全国学童保育連絡協議会の真田祐事務局次長は語ります。

 中学校給食も遅れています。三重県の実施率は約四割、都道府県中四十四番目です。同市は県平均より少ない三校中一校です。〇五年一月に合併した旧関町の中学校のみで、旧亀山市の二校は牛乳だけの「ミルク給食」です。

 〇五年十二月に「豊かな中学校給食を実現させる会」は、給食を求める署名四千六百三十五人分を教育長に提出しました(同市の中学生は千八十人)。しかし、会が求める自校方式の給食について、教育委員会からは「予算の面で厳しい」との声が聞かれます。

 同会の会長(44)は小学生の子ども二人がいます。「子どもたちも給食が大好きです。市としてやることが逆です。シャープでなくて、子どもたちが輝く亀山市にしてほしい」

道路に30億円

 三重県と亀山市は「シャープ工場進出の経済効果」を強調し、大企業誘致政策をすすめてきました。

 確かに法人税収入は増えましたが、支出も増えました。シャープ工場に県と市は、それぞれ九十億円、四十五億円を補助金として数年に分割して払っています。工事や通勤の車でおこる「シャープ渋滞」を解消するため、県と市は新しい道路建設に約三十億円かけます。「シャープ向け」と言われる民間賃貸住宅の固定資産税を二分の一に減額しています。

 家賃が高めの民間住宅は〇三年からの二年間だけで約千三百戸も増えました。一方、低額所得者向けの市営住宅は、空き家募集に七倍から十一倍もあるのに戸数を減らし続けています。

 〇四年一月に操業を始めたシャープ工場の雇用者は、昨年五月現在で約四千人です。関連企業をあわせると七千二百人です。そのうち、雇用期間が短い非正規雇用の派遣・請負労働者が約三千人を占めます。

 同市の人口は約四万九千人。シャープとその関連企業で働く人は〇五年から〇七年で約千人増えました。しかし住民登録する人は少数です。雇用が不安定なため、定住できない人が多いのです。

 「シャープにくる人は商店街で買い物しません。食事もシャープ内の食堂でしょう」と語るのは、市役所近くの商店街で実用衣料品店を営む女性(51)。大型店は増えていますが、中小商店の数は減り続けています。

共産党は批判

 県政・市政の大企業優遇策をはっきり批判しているのは日本共産党です。自民系・公明・民主系議員は多少の意見は言ってもすべて賛成してきました。

 日本共産党の服部孝規市議は「シャープ正社員は三十代、四十代が約六割です。学童保育所、中学校給食の実現など子育て支援が大切です。増えた税収は暮らし、福祉を最優先に使うべきです。ワンルームマンション建設などの乱開発を規制するため、まちづくり条例が必要です」と語ります。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp