
2007年1月21日「しんぶん赤旗」
地方政治、民主党の実態は
地方政治の多くで、自民、公明、民主は、首長が提案する予算案などの議案に賛成する与党です。マスメディアも「危うい監視機能低下」「『オール与党化』が起きている」(「毎日」17日付)と指摘しています。国政では「対決」ポーズをとる民主党も、地方政治では「オール与党」の一員として、くらしや福祉を切り捨てる一方で、ムダな大型公共事業を推進しています。その姿勢は与党ではない議会でも同様です。住民の願いにいかに背を向けているのか??各地の民主党の実態をみました。
「市長の側近」が一転…/福岡市
昨年十一月の福岡市長選で、民主党推薦の新人が現職の市長(二期、自民党推薦)を破り当選しました。
選挙で民主党陣営は、市政を「失われた八年間だ」と批判、「大規模開発をストップ」「暮らしに直結した生活基盤の充実」などと訴えました。
しかし、市議会・民主党(民主・市民クラブ)は前市長が提案した二期八年間の予算、条例などにほぼ100%賛成してきました。
ムダな大型開発につながる五輪の「本市招致を強く要望する」決議に賛成し、人工島建設の賛否を問う住民投票条例案には「必要性を見いだしがたい」と反対しました。一方で、国保料の値上げ、老人医療費助成の廃止、家庭ゴミの有料化など、くらし・福祉の切り捨てにはすべて賛成してきました。
ところが、小沢一郎・民主党代表による「対決軸」路線の演出で一転、にわかに対立候補を擁立。自民党陣営からは「民主党はほとんどの案件に賛成してきたはず。あたかも市長の側近だった」(自民党・太田誠一衆院議員)と揶揄(やゆ)されました。
当の民主・市民クラブ議員も市長選をひかえた〇六年当初、「議会通信」(新春号)の座談会で「(現職の市長は)民主党だと、自民党の人たちはいうんですよね」「基本的には地方議会で与党、野党はないと思うよ」と語っていました。
正規雇用は“時代遅れ”/京都府
京都府の山田啓二知事は、総務省直結で「集中改革プラン」をつくり、「経営効率」「集中と選択」を掲げ、府立病院の廃止、府立高校統廃合、生活保護世帯への盆暮れの見舞金廃止など福祉制度を切り捨て、自治体本来の役割に逆行した府政をすすめています。
民主党はその山田府政を、「共産党などの一部の勢力を除き、…京都府民の安心・安全を守るために、先頭に立って力強く府政を推進している立派な知事であると、府民の評価は非常に高い」とほめ上げます。
京都でも、補助金を出して企業を誘致しても、正規雇用の増えないことが問題になっています。共産党が、誘致企業への正規雇用義務付けを求めたのに対し、民主党議員は「最初から終身雇用を前提とした正規雇用みたいな話をしていると、まったく時代にそぐわない」と、正規雇用は時代遅れと攻撃しました。
山田知事は、リハビリ医療の拠点の府立洛東病院を、三万人を超える反対署名が集まっているにもかかわらず廃止しました。民主党は「府への財政負担が増加している状況にあっては、抜本的な見直しは不可避」と自公とともに廃止に賛成しました。
「解同」事務局長を4月市議選で公認/京都市
京都市では、民主党の市議会議員10人中、9人が「解同」(部落解放同盟)の推薦を受けています。
昨年、京都市では市職員の逮捕が13人に上りました。逮捕者には「解同」の推薦を受けた「優先雇用」枠での採用者が少なくなく、行政と「解同」の癒着に市民の批判が高まりました。
民主党は「解同」との関係を改めるどころか、4月の市議選には「解同」の京都市協議会の事務局長を公認で擁立。「解同」は解放の議席獲得をと、組織をあげて取り組むことを決めています。
自民党以上の規制緩和/岡山県
岡山県議会の民主党(民主・県民クラブ)は〇三年四月の改選後、執行部提出の五百九十九議案すべてに賛成しています。
これまで三百六十億円を投入、六割近い県民が見直しを求めている「倉敷チボリ」(レジャーランド)事業も賛成しました。
くらし・福祉は切り捨てながら、一方で大企業優遇には熱心です。
岡山県の大企業誘致補助金(限度額)は全国で三番目に多く、一社につき七十億円ですが、中小企業振興費はわずか五十八億円にすぎません。
〇六年度の県内大企業向け減税は百四十億円。一方で県民には住民税増税で二十六億円もの負担を押し付けています。
これらすべてに民主党は賛成してきました。
同党は自民党以上に規制緩和、「構造改革」路線を志向しています。
県医師会の「誰もが安心してよい医療を受けられるよう求める」請願に対し、?聖域なき構造改革?推進の立場から民主党だけが反対(〇一年十二月議会)。〇五年二月議会では、当時の自民党ですら賛成した「郵政民営化」反対の陳情も不採択にしています。
増税反対の陳情に対しては「消費税率をいつまでもあげないということは納得できない」(〇五年十一月議会)などと発言、これも不採択にしています。
460億円開発に“ときめき”/新潟県
新潟県の民主党(新潟みらい)は、県知事選(〇四年)では自公推薦の泉田裕彦知事に対立候補をたてましたが、議会の中では知事提案になんでも賛成です。
新潟県は、県財政に占める土木費の割合が21・7%と全国三位。四百六十億円をつぎ込んで建てた「朱鷺(とき)メッセ」は、開設から三カ月で空中連絡通路が長さ四十八?にわたって落下、稼働率も約四割です。企業誘致を見込んで五百十五億円をかけて造成した三つの産業団地も、十年以上たっても七割以上が売れ残っています。
民主党議員は「朱鷺メッセ」開設前に、「心のときめきを」感じていると期待を込めました。
土木費偏重で、民生費は6・5%、全国最下位です。乳幼児医療費の助成は三歳未満に据え置かれ、国民健康保険証の資格証明書の発行も、この四年間で一・六倍に増えています。
それにもかかわらず新潟市との共同で、新潟駅と新潟空港を結ぶ鉄道の建設、新潟駅の高架化、羽越本線の高速化の「三点セット」に、新潟空港の滑走路三千?化など、巨大事業を次々と打ち上げています。民主党議員は「事業が進んでいくことを期待」すると後押ししています。
中越大震災の復旧が進まないさなかの〇五年に、自民・民主議員ら二十一人が一人百二万円かけて豪華海外視察を計画。共産党の五十嵐完二議員の追及で県民の知るところになり、新聞各紙もとりあげるなか中止しました。
大企業にサービス次々/神奈川県
神奈川県では、元民主党衆院議員の松沢成文知事のもと、生活保護世帯への県独自の四つの支援制度(慰問金、小学校入学祝い品、小中学校修学旅行支度金、中学卒業生就職祝い金)を廃止するなど、福祉の切り捨てがすすんでいます。民主党は与党として知事提案に100%賛成、悪政推進の中心勢力です。
松沢県政は、人口十万人あたり老人ホーム数全国四十五位(〇三年時)、小・中学校数四十七位(〇四年時)など、遅れているくらしの問題には手をつけません。半面、土地の購入や工場の建設を支援する「インベスト神奈川」という制度をつくり、大企業には日産一社に百十六億円、富士フイルムにも九十三億円、十年間で総額五百七十八億円もの助成をしようとしています。民主党は誘致助成を、「時宜をとらえた極めて的確な施策であった」と持ち上げ、「企業側から見て、神奈川の魅力を一層増すような新たな施策を今後展開すべき」だと、さらなる応援を求めています。
知事が強力にすすめる巨大事業に「神奈川口構想」があります。神奈川県と羽田空港を結ぶ連絡路の建設(予算千七百億から二千四百億円)など、新たな高規格道路網建設に道を開くものです。民主党は「二十一世紀の神奈川の活性化にとって、大きな切り札となる重要なプロジェクト」と手放しで賛成しています。
「庶民増税凍結」に反対/北海道
北海道議会で民主党は野党の立場ですが、道民の願いに背を向ける点では自民党と変わりません。
民主党議員は昨年十月、日本共産党道議団が提案した、「庶民大増税の凍結と見直しを求める意見書案」への反対討論で「消費税については、将来の年金制度等を堅持するためにも必要な財源」とのべ、自民、公明とともに否決しました。
一方で、住民税の課税所得額が二百万円以下の場合、標準税率が5%から10%に倍増するなど、弱者に負担を押しつける道税の改悪には賛成です。
民主党は、労働法制を改悪し、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外制度)や解雇の金銭解決などを導入することに反対する意見書(共産党提案)にも、「労働契約にかかわる新たなルールづくりが必要であることについては、労使双方ともに認識は一致している」と反対しました。
高橋道政は、トヨタや日立など大企業十二社に総額百四十億円の誘致補助金を出しています。民主党はこれに賛成。財政難のなか、知事が大企業の増設補助金の削減を提案したのに対して「増設補助削減は、企業立地検討にマイナス材料になることを懸念し、知事に対して再検討を求める」と、企業の代弁者を買って出ています。
政務調査費の透明化に抵抗/名古屋市
名古屋市議会の民主党は〇六年十一月議会、日本共産党市議団が求めた政務調査費の領収書公開の条例改正案に対し、議運理事会で「領収書を公開すると問題が生じる」などと発言。議員の経費のムダ遣い、不透明さの改善に背を向けました。
結局、条例案は「オール与党」の反対で本会議に上程されませんでした。
また名古屋市民オンブズマンのアンケートに対しても、民主党は「(領収書の公開は)政治活動の自由が制限されるおそれがある」と回答するなど、公開に消極的です。
日本共産党市議団は、政務調査費の透明性を確保するために、自主的に領収書を公開。「共産党は支出の透明度が最も高い」(「中日」〇五年五月十四日付)と評価されています。