2007年12月30日(日)「しんぶん赤旗」
社会リポート
市バス職場 セクハラ横行
退職に追い込まれた女性運転手
党市議追及 市が対応約束
鹿児島
「二度と私のような被害者を出してほしくない。とにかく誰かに相談したかった」。鹿児島市交通局で女性バス運転手だった当時、セクシュアルハラスメント(性的いやがらせ)をうけた好子さん(51)=仮名=は涙をこらえながら語りました。被害は、相談をうけた日本共産党の竹原よし子鹿児島市議の議会質問で明らかになりました。(唐沢俊治)
公共機関でのセクハラ発覚・告発は、女性トイレもない職場環境を変える力にもなりました。
好子さんは二〇〇二年四月、嘱託職員として鹿児島市交通局のバス運転手に採用されました。福岡市のバス会社から転職で、市バス初の女性運転手の一人として注目を集めました。車内アナウンスも「ただいま、松葉づえの方がご乗車されました。どなたかお席を譲っていただけませんか」などと話すこまやかな気遣いが乗客の評判になりました。市バスのマニュアル作成につながるほど優秀な乗務員でした。
「仕事がどんなにきつくても誇りを持ってきました。なのにこの仕打ち…。顔で笑って心で泣きました」
酒席で触られ
好子さんに対するセクハラは採用直後から。
名前で呼ばれたことはなく「ババア」などと言われ、酒席で体を触られることもありました。上司に相談しても、「(相手は)悪い人ではない」などと取り合ってくれませんでした。
〇五年に北営業所へ異動しました。女性職員がいなかったため、女性専用トイレもありませんでした。当時の運行管理者から「たった一人のおなごのために、トイレなんか造らんでもいい」と大声で言葉をかけられましたが、近くにいた所長は注意しなかったといいます。
同営業所は、男性用トイレの一室に中扉を設け「女性専用」と表示。休憩室は男性も出入りし、コピー機など共用物が置かれた六畳間でした。悩みを相談する相手がいなかったため精神的に不安定になり事故を連続して起こし、今年七月末で退職に追い込まれました。
好子さんが在職中に北営業所の所長だった男性は、「そのようなことは聞いていない」と否定しました。市交通局の橋口俊二総務課長は、「セクハラ行為や女性蔑視(べっし)はあってはならないこと。早急に事実関係を把握し、調査を踏まえ厳正に対処したい」といいます。
好子さんが名前を挙げたセクハラ行為の中心にいた八人のうち六人は事実を認め、二人は否定しているという交通局の中間報告がありました。
トイレを増設
現在二百七十八人のバス運転手のなかで、女性は五人います。好子さんの訴えはひとごとではないのです。竹原市議は九月と十二月の市議会で追及しました。九月の質問を受け、市側は、全職員にセクハラ防止のパンフレット配布や相談窓口を周知徹底するなど対策を取りました。
大西義幸交通局長が十二月議会での質問に対し、「未整備の北営業所で女性専用のトイレと休憩室を整備します」と答弁。女性用トイレが増設されました。
また、「気軽に相談できる弁護士などの専門家をまじえた新たな体制づくりを」という竹原市議の求めに、市側は「相談しやすい体制は必要。検討する」と答えました。
新婦人鹿児島県本部の小柴和喜子会長は「市民に接する機会が多い公の職場でセクハラが起きたことに驚いています。女性蔑視など問題を抱えた職場を改善するため、今後も力を尽くしたい」。