2007年12月28日(金)「しんぶん赤旗」
シリーズ これでいいのか選挙制度
異常に高い供託金
国民の政治参加阻む
日本では、選挙に立候補するために高額の供託金を法務局に預けなければいけません。高額の供託金は世界の“常識”なのか、それとも日本の異常なのか――日本共産党の井上哲士参院議員が依頼した国立国会図書館の調査でみてみます。(佐久間亮)
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日本の供託金制度は一九二五年の普通選挙法から始まりました。当時の天皇制政府は、一定額以上の納税者に限られていた選挙権を二十五歳以上の成人男子に広げるかわり、立候補に高額の保証金を課したのです。
これが戦後に引き継がれ、額も繰り返し引き上げられました。一九九三年の公職選挙法の改悪でそれまでの一・五倍になったのです。その額は、国政選挙の選挙区で三百万円、比例区では六百万円にもなります。
一般の国民が簡単に払える額ではなく、事実上、立候補の制限にもつながります。
しかも、選挙で規定の得票率(法定得票率、衆院小選挙区では有効投票総数の10%)に達しなければ全額没収されます。 世界はどうか。国会図書館の調査では、アメリカ、ドイツ、イタリアをはじめ大多数の国で供託金の制度自体がありません。フランスは一九九五年に廃止しています。
供託金制度がある国でも、その額はイギリス・五百ポンド(約十一万円)、カナダ・千ドル(約十一万円)、オーストラリア・五百ドル(約五万円)と多くは低額で、没収点も日本より低くなっています。国会図書館調査でみれば、日本の供託金は世界一の高額です。
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オランダは、議会に議席を持たず前回選挙にも候補者を擁立していない政党に限り一万千二百五十ユーロ(約百八十万円)の供託金を課しますが、没収点は低く設定されています(有効投票総数の約0・5%)。
一方で、日本の公職選挙法を踏襲する部分が多い韓国では、供託金・没収点(千五百万ウォン=約百八十万円、10%未満で全額、10―15%で半額没収)とも厳しく設定されています。
選挙に立候補することは、選挙で議員を選ぶことと同様、主権者である国民の重要な権利です。高額の供託金によって立候補の自由を抑制することは、「国民の参政権」を定めた憲法一五条や、国会議員の資格を「財産や収入で差別してはならない」と定めた憲法四四条に反するものです。
政党助成金から支出も
国民には高額の供託金を課して被選挙権を制限しながら、自民党、民主党は供託金にも国民の税金である政党助成金を充てています。二〇〇五年の総選挙では、自民党は二千百万円、社民党は二千七百万円、民主党は八千七百万円の供託金を政党助成金から支出しています。
供託金制度は、憲法違反の政党助成金を受け取らない政党の政治活動を財政的に圧迫し、政党助成金を受け取る政党と受け取らない政党との選挙の公正をゆがめる役割まで果たしているのです。
高額の供託金の狙いが、国民の政治参加を阻むことにあるのは歴史的にも明らかです。高すぎる供託金を大幅に引き下げることが求められています。
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『ここがヘンだよ日本の選挙』の共著者
志田なや子弁護士の話
被選挙権の平等に反する
国民には選挙権のみならず、被選挙権といって立候補をする権利があります。憲法四四条は被選挙権の平等を定めており、高すぎる供託金はこれに反する疑いがあります。
お金がなく、供託金を準備できない人は立候補もできないというのは、自ら選ぶこと、あるいは自ら立候補して政治に参加することを制限することになり、国民主権の原理からいっても大いに問題があります。
大切なことは、国民の民意が鏡のように議会に表れることです。お金のある人もない人も、民意の分布が鏡のように議会に表れることです。高すぎる供託金は、それを妨げます。世界でも異常に高い供託金の額を、大幅に引き下げる必要があります。