2007年12月26日(水)「しんぶん赤旗」

主張

新基地アセス

欠陥「方法書」を取り下げよ


 沖縄の仲井真弘多知事は二十一日、防衛省が作成した米軍新基地建設の環境影響評価方法書について、必要なことが記載されないなど問題が多く「審査するに足りない」と批判し、項目、手法の「再検討」を求めた意見書を防衛省に提出しました。

 知事意見書が、沖縄県環境影響評価審査会が知事に答申した方法書の「再度実施」=書き直しを直接求める形をとっていないのは弱点です。しかし、審査会の答申を「真摯(しんし)に受け止める必要がある」と防衛省に要求しているのは、知事が県民の新基地反対の意思を反映せざるをえなかったあらわれです。

審査するに足りない

 日米両政府が米軍キャンプ・シュワブ(名護市)につくろうとしている新基地は、アメリカの不当・不法な先制攻撃戦争の足場になるだけでなく、住民に爆音や墜落事故の危険を押し付け、ジュゴンのすみかを奪うなど自然環境を破壊する新たな温床になるものです。七割をこす県民が新基地建設計画に反対し続けているのはそのためです。

 「理解を求める」といいながら県民の意思を無視し、建設の手続きをしゃにむに進める政府・防衛省のやり方が怒りを大きくしています。防衛省がつくった環境影響評価方法書もその一つです。

 方法書は、新基地建設について知事や関係自治体、県民の適否の判断をあおぐものである以上、調査項目や手法を具体的に示さなければなりません。ところが、方法書は名護市辺野古沿岸域に飛行場をつくるという以外、具体的なことは何ひとつ示していません。審査のため審査会が三十五項目七十六問の質問をだしても、防衛省は「決定しておらず具体的に示すことは困難」と木で鼻をくくった態度に終始しました。これでどうして是非を判断できるのか。判断の材料を何一つ具体的に示さないで意見をだせというのはあまりにも県民をばかにした態度です。

 とくに新基地を使う米軍機の種類も運用形態も示さないのは重大です。爆音などの被害に直結します。

 米軍は垂直に離着陸することも可能な大型輸送機オスプレイの使用計画をあきらかにしていますが、方法書には書いていません。同機は墜落も多く、明記すれば反発が広がるため隠しているのは否定できません。

 飛行経路を示さないのはもっと重大です。米軍はすでに緊急事態だけでなく日常的な飛行訓練でも、陸部を飛ぶとくりかえし説明しています。住宅上空の飛行は深刻な爆音被害だけでなく墜落の危険ももたらします。飛行経路を明示しないのはそれを県民に知られたくないからです。

 米軍の裁判資料で、普天間基地(宜野湾市)にもない戦闘機弾薬搭載場の設置が決まっているのに、方法書ではそれさえ書いていません。海兵隊員を戦場に運ぶ強襲揚陸艦が接岸できるといわれる二百十四メートルの岸壁建設問題もあいまいです。

 米軍と協議中なので説明できないといいながら、すでに合意しているものさえ隠しているのでは方法書の意味はありません。防衛省は欠陥があきらかになった方法書を再検討し出しなおすべきです。

基地なくせが願い

 沖縄県民は六十年以上も米軍基地あるがゆえの苦しみを受けてきました。基地なくせは県民の悲願です。もともと新基地建設が県民に認められるはずがありません。

 宜野湾市民を苦しめている普天間基地を閉鎖・撤去し、米軍基地の縮小・撤去をせまることが重要です。


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