2007年12月24日(月)「しんぶん赤旗」
カリブ海地域
「連帯と助け合い」の風
戦争や弱肉強食の市場原理主義に対抗して、社会的な連帯と人権尊重の精神で協力し合おうという国レベルのイニシアチブが、米国の足元のカリブ海地域で発展しています。
暖房燃料安価に
ベネズエラ政府はこのほど、米国内の低所得世帯に対する今年の暖房支援計画を発表しました。
米国内の二十三州の都市で二十二万四千世帯を対象に、暖房用石油を市価の二―四割引きで提供するとしています。これにかかる費用は総額一億ドル(約百十三億円)とされます。
この政策は、二〇〇五年に米南部を襲ったハリケーン・カトリーナの被災者支援に際してチャベス大統領が提唱したもの。米国内で操業しているベネズエラ国営石油公社の子会社CITGOが、各都市の市民援助団体と協力して進めてきました。
今年の事業開始式が十三日、ワシントンでありました。
民間団体「シチズンズ・エネルギー」のケネディ会長は「支援への参加を米国の石油企業に呼びかけたが、一千億ドル近い利益をあげているエクソンを含めて一社も応じなかった」と指摘。「戦争に多額の費用を投じながら、庶民泣かせの石油高騰に何の手も打たない」とブッシュ政権を批判しました。
無料手術百万人
キューバとベネズエラが協力して進めている白内障の無料手術をうけた人が、百万人に達したことがこのほど明らかにされました。
「奇跡の計画」と名付けられたこのプロジェクトは、当初は両国民を対象に始まりました。その後ラテンアメリカ・カリブ海地域の、すべての白内障患者の視力を取り戻そうという壮大な計画に発展しました。
毎年六十万人ずつ、二〇一六年までに六百万人を治療しようという目標を掲げています。
患者の負担は一切なく、手術はキューバで実施し、医療費も同国が負担。渡航と滞在の費用一切はベネズエラ政府が負担しています。
「百万人達成」は、キューバのカストロ議長がこのほどハバナで開かれた温暖化対策専門家の円卓会議に寄せたメッセージで明らかにしました。キューバ人十五万人のほか、三十一カ国から八十五万人が手術を受けたといいます。
カストロ議長はこのなかで、イラクやアフガニスタンで戦争を続ける米政府が七千億ドル近い軍事費を費やしながら、地球温暖化対策に後ろ向きになっていると批判。地球環境の問題には、市場や競争の原理ではなく、全人類的規模での「連帯と人権尊重の精神で対処することが必要だ」と強調しました。
会議では「競争や支配、搾取」につながる米型資本主義や新自由主義の横暴に対抗して、社会的な連帯と協力、互恵のネットワークを広げる重要性が論議されました。(田中靖宏)