2007年12月23日(日)「しんぶん赤旗」

主張

厚木爆音4次訴訟

飛行やめさせるしか道はない


 米海軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の周辺住民六千百三十人が、国を相手取り、米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと、爆音被害に対する損害賠償を求める第四次訴訟を横浜地裁に起こしました。

 五千四十六人が参加した第三次訴訟(一九九七年)では、爆音被害に対する損害賠償請求に的をしぼり過去最高の約四十億円の賠償支払いを認めさせましたが、爆音はいまも容赦なく住民を襲っています。今回、第一次(七六年)、第二次(八四年)の訴訟の原点に立ち戻って飛行差し止めを求めたのは、爆音源である飛行をやめさせなければ静かな空を取り戻せないからです。

米本土にはない異常

 厚木基地は人口密集地の一等地を占め、ここから飛び立つ米空母艦載機が夜はNLP(夜間離着陸訓練)で、昼間は米軍機と自衛隊機が飛行をくりかえし、二百万人以上もの周辺住民を苦しめ続けています。

 今回の訴訟参加者は、「受忍限度をこえる」うるささ指数七五以上の地域に住んでいる人々です。テレビも電話も聞こえない、会話もできない、寝ているこどもが目を覚まし泣きやまない、低空飛行なので怖い―爆音はまさに生活破壊の元凶です。

 長期にわたって自国民がこれほど苦しんでいるのに、アメリカに飛行中止を求めず、自衛隊に飛行を許し続けている日本政府に住民の怒りが頂点に達しているのは当然です。政府は爆音被害の押し付けをただちにやめるべきです。

 厚木基地のフェンスに寄り添って人口密集地が広がっています。もともとこんなところに基地があること自体が問題です。

 日本共産党の志位和夫委員長(当時、書記局長)が九八年の国会で追及したように、米本土でNLPが行われるカリフォルニア州ミラマー基地は、厚木基地周辺の三十万人以上が住む騒音指定区域全体がすっぽり入る広さをもっています。しかもその周囲は空き地が広がっています。他の基地もほとんど、周囲に山林や広大な平野、農場が広がり、周辺人口は数千人程度です。

 厚木のように人口密集地に基地があり、住民の頭上を飛びまわること自体、米本土ではみられない異常です。厚木基地周辺の爆音被害の異常を解決するには、飛行の中止しかないことは誰の目にもあきらかです。

 政府は住民の願いにこたえ飛行をやめるのではなく、厚木基地の空母艦載機部隊を岩国基地(山口県)に移すことで批判をかわす計画です。しかしこれでは、もともと爆音被害にさらされている岩国市民をさらに苦しめるだけです。

 しかもこの米軍再編計画では、岩国基地にいる自衛隊機多数が厚木に移駐します。自衛隊機の飛行が増えます。爆音被害の解消につながるはずがありません。

 政府がやるべきことは、痛みの移転という姑息(こそく)なやり方ではなく、爆音被害の根源である飛行の中止です。厚木基地第四次騒音訴訟にこめられた願いを実現するため、アメリカに飛行中止を求め、そのための交渉にふみだすべきときです。

平和的生存権の行使

 憲法は戦争放棄の九条と、一三条の幸福追求権、二五条の生存権が一体となって、国民が「平和のうちに生存する権利」(前文)をもっていると明記しています。昼も夜も住民を苦しめる爆音被害は明白な憲法違反です。

 日米安保条約廃棄の旗をかかげ、政府に憲法が保障する平和的生存権を順守させる運動が重要です。


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