2007年12月22日(土)「しんぶん赤旗」
主張
財務省原案
大企業減税と軍事費にメスを
福田内閣初の予算となる二〇〇八年度予算の財務省原案が省庁に内示され、復活折衝が始まっています。
四日に閣議決定した「予算編成の基本方針」が、小泉・安倍両内閣の「骨太方針」を「堅持」すると明記しているとおり、「構造改革」路線を継続する予算となっています。
社会保障の削減路線
小泉・安倍「構造改革」は、大企業とその役員・大株主に空前の利益をもたらす一方で国民のなかに深刻な貧困を広げてきました。「三位一体改革」と称して国の赤字をしわ寄せし、地方交付税を削減して地方を切り捨ててきた結果、地方の疲弊が一気に進みました。
参院選での与党の大敗は弱肉強食の政治への国民の明確な審判です。予算案はそれに対する政権の「回答」であり、福田内閣にはゆきづまった路線を変える意思も能力もまったくないことを示しています。
財務省原案は、高齢化などで増える社会保障予算を、毎年二千二百億円も削減する小泉「改革」の方針を来年度も続けようとしています。
「これでは暮らしていけない」と、母子家庭から悲鳴が上がっている生活保護の「母子加算」の段階的廃止を、今年度に続いて継続します。最近の灯油高騰や生活必需品の値上がりで暮らしがますます圧迫されているにもかかわらず、母子家庭の生活保護費を減らすなど、あまりにも非人道的な冷たい仕打ちです。
高齢者に医療負担増と差別的な医療抑制を押し付ける後期高齢者医療制度は、ごく一部を一時的に凍結するだけで四月から強行します。
中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険の国庫負担を一千億円も削減し、組合健保に肩代わりさせるといいますが、筋違いの数字合わせであり、国の責任放棄です。
暮らしがどんな困難に直面しようと社会保障の削減路線を絶対の枠組みにするやり方は、社会保障を必要とする国民を制度からつぎつぎと排除する暴走装置となっています。この路線をやめない限り、社会保障が国民の命綱を断ち切る悲惨な事態はなくせません。
他方で福田内閣は大企業向けには研究開発減税を拡充して法人税負担をさらに軽くしようとしています。これで一部の大企業の法人税率は最大で9%引き下げられ、中小企業の軽減税率の22%より低い21%となります。もともと昨年で終了するはずだった証券優遇税制は、来年も一部を存続し、さらに大資産家を恒久的に優遇する金融課税の新制度を検討する方針です。
軍事利権の疑惑で巨額の水増し受注が明らかになってきたにもかかわらず軍事費は約五兆円を維持し、米軍再編経費も追加しました。道路特定財源を十年先まで続け、道路建設のためのガソリン税の増税措置(暫定税率)も固定化を図っています。
消費税増税に橋渡し
額賀福志郎財務相は二十日の記者会見で、予算案は「将来の改革への橋渡し」だとのべました。
政府・与党は消費税増税の大合唱です。消費税を社会保障財源だといって増税すると同時に、増税がいやなら社会保障はがまんしろと国民を押さえつけるテコにする狙いです。同時に、大企業減税と軍事費の「二つの聖域」を温存する財源に利用しようとしています。額賀大臣の言葉を借りれば、福田内閣の来年度予算案は「消費税増税への橋渡し」です。こんな予算に未来はありません。
「二つの聖域」にメスを入れて財源を確保し、社会保障とくらしを守る予算に組み替えるよう求めます。