2007年12月20日(木)「しんぶん赤旗」
主張
経労委報告
人間らしい労働へたたかいを
減ってゆく賃金、増えてゆく労働時間。まじめに働いても賃金が低くてまともな生活ができない「ワーキングプア」(働く貧困層)の急増。「労働崩壊」とよばれるほど労働者の状態はこわれています。いま「人間らしい労働」をとりもどすための集中した改善論議が、政治と社会に求められています。
日本経団連の異常な感覚
財界の側で労働者の生活改善に主要な責任をもつ日本経団連が十九日、〇八年版経営労働政策委員会報告を出しました。春闘にのぞむ経営側の対策方針とよばれるものです。今回のテーマは「生産性に見合った人件費決定とワーク・ライフ・バランスの実現」。しかしそのなかで展開している内容は、部分的な譲歩はあるものの、労働者の状態改善に背を向けた異常なものです。
まず賃金については「横並びで賃金を引き上げていく市場横断的なベースアップは、すでに過去のものになっており、もはやありえない」と断言します。業績がいいときは一時金への反映にとどめ、賃金ベース(基準)のアップ、つまり本来の意味の賃上げはやらないという従来の主張のくりかえしです。こんなひどい話はありません。
労働者は必死に働いて生産性を上げています。実際、日本の大企業はバブル期をこえる空前の利益です。資本金十億円以上の企業の経常利益は二〇〇一年から〇六年まで五年間で約二倍に増えました。役員報酬も約二倍、株主への配当金は約四倍に増えています。労働者の賃金はといえば、増えるどころか一兆四千億円も減っています。
厚生労働省の〇七年度版「労働経済白書」は「長期の景気回復が持続し、企業業績も大きく改善しているが、労働生産性の上昇の成果は、賃金の上昇にも労働時間の短縮にも配分されていないため、今回の景気回復過程での労働分配率は、大きく低下している」とのべています。経団連の報告はこの指摘がよほど気になるのか、労働分配率問題にあえて「付言」し、日本は高い水準にあるなどと反論を試みています。
こんな陳腐な居直りに力を注ぐのではなく、労働者にたいする冷酷な姿勢を真剣に反省し、日本経済の健全な発展へ大企業の社会的責任をもっと果たしてほしいというのが国民の共通の願いです。
もう一つのテーマである「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)の実現は結構なことです。しかし、仕事と生活を調和させ、人間らしい生活を実現するために何よりも重要なことは、長時間過密労働の是正です。これなしに「ワーク・ライフ・バランス」の実現はありえません。
最近、電機連合がまとめた「生活白書」によると、組合員の妻の62%が夫の労働時間が長く健康の不安を感じていると答えています。一日の平均労働時間は十時間二十分で年休の取得率は十年前の75%から〇六年は61%に低下。いまの働き方が続くと心の病になると心配している妻が54・1%にのぼっています。
長時間過密労働の是正を
経団連の報告はこれを改善する気がありません。「効率的な働き方の推進」をとなえて成果主義を徹底する、「柔軟な働き方の推進」で非正規の短時間労働者の増加をはかるという主張です。これでは労働者の状態は悪化するだけです。
「人間らしい労働と生活」の実現はいまや国民的大義です。大企業の横暴を許さないために、労働組合をはじめとしたたたかいが重要です。