2007年12月19日(水)「しんぶん赤旗」
主張
年金記録もれ
尽くすべき努力を尽くせ
「宙に浮いた年金記録」に関する参院選の自民党公約をめぐり、福田康夫首相が十七日、「誤解を招く表現があった」として陳謝しました。
本人特定が難しい記録が相当数に上るという舛添要一厚生労働相の十一日の発表に、「公約違反だ」と厳しい批判が噴出しています。これに対して福田首相は「公約違反は大げさ」「(公約で)どう言っていたのかさっと頭に浮かばなかった」などと人ごとのように答えていました。
国民に陳謝するのは当然ですが、福田首相が本当に謝るべきなのは、国民に対する公約をないがしろにした自身の姿勢についてです。
本末転倒の姿勢に
当時の安倍晋三首相は、舛添参院議員・現厚労相の質問に答え「最後の一人に至るまで必ずチェックする、そしてすべてお支払いする」と答弁しています(六月の厚労委)。選挙演説でも二人は同じ発言を繰り返しました。ところが、相当数の年金記録の本人特定が困難だと公表したとたん、舛添大臣や町村信孝官房長官は「選挙中の意気込みで言ったが、誤解があった」などと言い逃れようとしました。「選挙中」の発言なら、なおさら有権者に対する選挙公約として重いはずです。
福田内閣の本末転倒の姿勢が国民の怒りに油を注いだのは当然です。
厚生労働省によると、五千万件を超える「宙に浮いた年金記録」と年金受給者・加入者の第一次の照合で、約四割に当たる千九百七十五万件の本人特定ができていません。
本人が死亡していると思われる記録、結婚で名字が変わっていると考えられる記録、入力の際の変換ミスや転記ミス、届け出そのものが誤っていると思われる記録などです。千九百七十五万件のうち九百四十五万件が特に困難だとしています。
一次照合は氏名、住所、生年月日の三条件の一致を見るものです。厚労省は、一次照合で本人特定ができなかった記録は、条件を緩和した二次照合や記録の内容に応じた調査を進めるとしています。
政府は公約通り、最後の一人までチェックして年金を支払うよう、あらゆる手立てを講じるべきです。
残りの約三千万件のうち千五百五十万件は厚労省が対応済みとしている記録です。また、約五百万件は氏名などが欠けた記録ですが、帳簿との照合で補正が進んでいます。
一次照合の結果、記録と本人が結びつく可能性がある千百万件、八百五十万人にまず、「ねんきん特別便」が発送されています。
安心持てる計画に
「ねんきん特別便」は日本共産党が提案した「一億人レター作戦」などを反映して実施されるものです。政府は来年十月までかけて段階的に全加入者に送る計画ですが、スケジュールを前倒ししてすべての国民への通知を早急にやるべきです。照合作業が困難であればあるほど、国民の知恵と情報に依拠して解決を図ることが重要になってきます。
その際に、政府はすでに死亡した人の記録は送付しないとしていますが、遺族年金の受給資格が回復できる可能性もあり、送付の対象に遺族を加える必要があります。
「特別便」の内容にも、もっと配慮がいります。「特別便」に本人に結びつく可能性のある記録の加入期間や標準報酬月額、事業所の住所など、記憶をたどるヒントを工夫して盛り込むべきです。
これらを含め、国民が本当に信頼と安心を持てるような計画に、急いで作り直すことを政府に求めます。