2007年12月17日(月)「しんぶん赤旗」

葛飾ビラ弾圧 高裁判決に厳しい目

民主主義つぶすな


 東京都葛飾区のマンションで日本共産党の「都議会報告」などのビラを配った僧侶・荒川庸生さん(60)の行為について、一審の無罪判決を覆し、有罪にした東京高裁判決(11日)に怒りが広がり、荒川さんへの激励が相次いでいます。マスコミは「常識を欠いた逆転判決」「表現の自由を押さえつけた」などときびしい批判の目を向けています。


守る会に次々

怒りで胸いつぱい■みんなの問題■運動強める

 荒川さんを支援する「ビラ配布の自由を守る会」には判決後、怒りと激励のファクスがひっきりなしに寄せられています。「守る会」の小松香代子事務局長は「判決後、とことんたたかうと表明した荒川さんの姿に感動しました。それを受けとめ、改めてともにたたかう決意を固めました。全国から寄せられるファクスやメールにも、同じような思いがあふれていて励まされます」と話します。

 「守る会」に寄せられたファクスから一部を紹介します。

 「胸がよじれるほど怒りでいっぱいになりました。なりふりかまわず、憲法じゅうりんを恥ずかしいとも思わない判決です。今までに増して運動、世論を盛り上げましょう」(仙台市・女性)

 「不当判決、許せません。裁判長に抗議の電報を打ちました。まわりの人にこれを知らせて、わたしたちの知る権利、言論・表現の自由を守っていかなければと思いを強めています」(さいたま市・女性)

 「こんな不当なかたちで私たちの権利が奪われていくことに恐怖を感じます。荒川さん、自由と民主主義のために頑張って下さい。わたしたちみんなの問題です。心から支援します」(女性)

共産党本部に

政府の危機感の表れ■政党ビラは大切な情報

 日本共産党本部にも同様のメールが寄せられています。その一部を紹介します。

 「有罪判決は、ビラの威力を感じている政府や自民党の危機感のあらわれで、裁判所も同じ考えにたってのことだと思う。これからも無罪を勝ちとるため、がんばりましょう」(女性)

 「ピザやクリーニングなどの商業ビラ入れの人たちは、それが同じ『住居侵入』であったとしても、逮捕・起訴されていませんから、共産党のビラや、野党のやることはダメということで、『犯罪にしたい』のでしょうね。政党ビラは私からみれば政治を知る大切な情報の一部。(中略)この国の民主主義をつぶす方向のように思われてなりません。…思想信条の自由や国民の知る権利を守ってください。陰ながら支援します」(「怒っている一市民」)

 「朝日新聞に『常識を欠いた逆転判決』という社説がのったが、まったくその通り。(中略)マスコミに投書するとか、署名活動や集会を開いて、この不当性を徹底的に追及してほしい」(埼玉県・男性)


各紙社説

常識欠いた判決 表現の自由守れ

 葛飾ビラ弾圧事件でビラを配った荒川庸生さん(60)にたいし、「住居侵入罪に当たる」と罰金五万円の有罪にした東京高裁判決に、新聞各紙の十三日付社説は、いっせいに批判的見解を表明しました。

 「政治の自由を奪うまい」との見出しを掲げたのは「東京」。「宅配食品や不動産などの数々の商業ビラの投函は、日常的なことである」として、チラシの投函を禁ずる張り紙があったことを「有力な根拠」に有罪とした判決に「まるで平穏の価値が“金科玉条”となって、表現の自由という大きな価値を押さえつけた印象だ」と疑問を投げかけます。

 「注意が必要」として、「反戦ビラの配布や国家公務員による政党ビラ配布で、有罪判決が続いている」ことを指摘。「言論を発露する一手段としてビラはある。民主主義の根幹は、その自由を保障することにある。もし、取り締まりに政治的意図があるのなら、“微罪”にくるんだ『言論封じ』といわれても仕方がない」と言論封じへ警告を発しています。

 「朝日」は「常識を欠いた逆転判決」と批判しています。「ビラ配りに住居侵入罪を適用することは、まだ社会的な合意になっていない」とした一審判決の方が「うなずける」とし、「住職の行動が刑罰を科さなければならないほど悪質なものとはとても思えないからだ」とのべています。

 自衛隊のイラク派遣反対のビラを防衛庁官舎で配って住居侵入罪に問われた事件も、東京高裁が一審の無罪判決を取り消し、罰金刑を言い渡しています。このことにもふれ、「表現の自由への目配りを欠いた判決が高裁で相次いでいることは心配だ」とのべ、「常識に立ち戻った判断」を最高裁に求めています。

 「毎日」は、「ビラは小さな声を多数に伝えるために手軽で有効な手段だ。民主主義社会では表現の自由の一環として、ビラ配りの自由が保障されるべきことを改めて共通認識としたい」と表明。「自分の意見と異なるビラや不要な広告を配られるのは迷惑だとしても、社会全体の利益を優先し、表現の自由を守るために受忍する姿勢が求められる」としています。

 琉球新報は十四日付社説で「言論の『不自由』が加速しそうな判決だ」と憂慮を表明。「政府に批判的な活動に対する『弾圧』的な印象を与える」と「弾圧」の文言を使い、最後にこう訴えています。「特高警察が横行した言論の不自由な時代が日本にはあった。ビラ配りの有罪判決が、言論封殺の新たな戦前回帰につながることがないよう、司法判断を注視したい」


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