2007年12月14日(金)「しんぶん赤旗」
主張
与党税制大綱
国民を欺く「社会保障税」化
自民党と公明党が二〇〇八年度の与党税制大綱をとりまとめました。
〇九年度以降の税制「改革」で消費税を社会保障の主要な財源にするとうたっています。「社会保障」を口実にして消費税を増税しようという狙いです。
与党は世論の反対が強い消費税増税にどう道筋をつけるかに腐心しました。自民税調の津島雄二会長は、増税に反対しにくい空気をつくるために、消費税を「社会保障税」と改名することまで打ち出しました。
福祉破壊の不公平税制
「社会保障」をうたっても、看板を付け替えても、消費税の実態が変わるわけではありません。
消費税は一部の例外を除くすべての取引と消費にかかります。
庶民の目から見れば、消費税は、生計費には課税しないという税制の民主主義を踏みにじり、生活を悪化させる生活破壊税です。
生活に追われる低所得者は所得のほとんどを消費に回さざるを得ない一方で、余裕のある高額所得層は貯蓄を積み上げて金融資産とし、巨額の遺産を残します。
例えば、自民党の財政改革研究会の報告にあるように税率が10%に引き上げられたとすれば、二百万円の所得をすべて生活費として消費する人の負担率は10%なのに、一億円の所得で五千万円消費する人の負担率は5%にとどまります。消費にかかる消費税は、所得の低い人ほど所得に対する負担が重くなる逆進性から逃れられません。
負担できる余裕の大きな人が、より多くの割合を負担する「応能負担」の原則は税制の民主主義の根幹です。最低生活費を除いた所得は、所得額が高い人ほど大きくなるため、同じ税率では高所得者ほど実質的な負担の重さが軽くなります。応能負担の具体的な姿が所得税のような累進課税となっているのはこのためで、それと正反対に実質的な負担が低所得者ほど重い逆進性を持った消費税は、応能負担の原則をひっくりかえす不公平きわまりない税金です。
「構造改革」路線によって貧困と格差が広がり、いまや貯蓄のない世帯が二割を超えているのに、個人の金融資産は千四百兆円に上ります。この現実に照らして消費税増税は、これまでに増して低所得層ほど厳しい打撃を与えることになります。
消費税を税務署に納める義務を負っているのは事業者です。
ここにも力関係による甚だしい不公平があります。強い市場支配力を持つ大企業は消費税分をすべて価格に上乗せして自己負担をゼロにすることもできますが、弱い立場の中小企業は価格に転嫁することもできずに自腹を切っているのが実態です。消費税増税は、経営難に苦しむ地域の中小企業の経営をいっそう悪化させ、大企業に比べて所得が低い中小企業労働者の生活を脅かします。
これほど「社会保障」の目的に相反する税制はありません。
財界の言いなりに
一方で与党が“心を砕いた”のは、与党の中からも「金持ち優遇だ」と声が上がっている証券優遇税制をどう続けるか、大企業減税をどう拡充するかということです。
日本経団連が十一日に発表した「優先政策事項」は、消費税増税と法人実効税率の引き下げ、証券優遇の永続化を要求しています。
恒例の「今年の漢字」は「偽」に決まりましたが、「庶民のため」を装って、財界言いなりに庶民増税をすすめる与党のやり方は最悪の偽装、欺まんというほかありません。