2007年12月11日(火)「しんぶん赤旗」

危険度アップ 小沢構想

“国連軍限定”(93年)から有志連合ISAF参加へ


 民主党の外交防衛部門会議が十一日にも新テロ特措法案への「対案要綱」をまとめようとしています。「骨子」段階で盛り込まれていた海外派兵の恒久法につながる記述がどうなるかが注目されます。政府・与党が米軍支援の再派兵に固執する一方で、野党第一党の民主党が派兵構想を打ち出す危うさ。その根底にある“小沢構想”の問題点をみてみます。(中祖寅一)


 「(福田首相は)『安全保障、国際貢献の考え方そのものを百八十度転換していい』とまで言った」

 民主党の小沢一郎代表は十一月末の民放番組で、福田首相との党首会談で合意文書まで書いたことを明らかにしながら、持論が受け入れられたことを誇りました。

 小沢氏の持論とは、「国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたもの…たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない」(『世界』十一月号)というもの。

 この主張の「源」は、小沢氏が自民党幹事長時代に責任者を務めた「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」(通称・小沢調査会)の「提言」(一九九三年)です。

 しかし、現在の小沢氏の主張は、十四年前の「提言」より、いっそうエスカレートした内容になっています。

 九三年の「提言」は、「日本が実力行使を目的として参加するものは、正規の国連軍に限定して考えるのが基本」としていました。国連憲章第七章にもとづく正規の国連軍は結成されていませんが、「提言」は「国連軍に対して、積極的な協力、さらには参加を行う必要がある」としたのです。そして多国籍軍については「当面、資金面・物資面での支援や、実力行使を目的としない医療・輸送・環境保全などの人的協力にとどめるべきであり、それを超えた人的協力は差し控えるべきと考える」としました。

 ところが小沢氏は『世界』の論文で、ISAF(アフガニスタン国際治安支援部隊)への参加を打ち出したのです。ISAFは、「国連軍ではなく、有志連合である」(ISAFホームページ)とされ、派兵した国々の指揮で活動する多国籍軍です。

憲法論の詭弁

 そもそも、国連軍への参加が“憲法に抵触しない”という主張が一種の詭弁(きべん)です。

 国連軍の行動では、各国が兵力を提供する場合は、「各自の憲法上の手続に従って」、国連安全保障理事会との間で「特別協定」を結ぶことが義務づけられています(国連憲章四三条)。国連軍であっても、仮に兵力提供する場合は、加盟国の国家意思として行われるのです。

 まして憲法九条一項は「国権の発動としての戦争」と並んで「武力による威嚇又は武力の行使」を禁じています。あらゆる形態の武力の活用を禁じる趣旨です。“国連の行動だから憲法に反しない”という論法は通じません。

 国連軍を基準に論じている小沢氏の“持論”は、多国籍軍にはあてはまりません。

 民主党の三役経験者の一人は、「多国籍軍も(国連の)集団安全保障活動の一種ではあるが、国ごとの武力行使だ。ISAF参加は憲法解釈を権力側に有利に変更することになる」と指摘。自民党の防衛庁長官経験者でさえ「国連正規軍の招集でも、これに応えるためには、改憲か三分の二以上の国会決議で憲法解釈を見直す必要があると思うが、多国籍軍でもいけるというのは緩すぎる」といいます。

米国から歓迎

 「ブッシュは受け入れないだろうが、(米国の)民主党やアメリカのシンクタンクには評価するものが現われている」

 小沢氏の側近は、ISAF参加論について、こういいます。

 十一月七日、来日したコーエン元国防長官は、小沢氏の主張について「政府はこのチャンスを無視してはいけない。意味ある前進で憲法にも抵触しない」と高く評価しました。

 また米スタンフォード大学のスナイダー・アジア太平洋研究所副所長は米紙クリスチャン・サイエンス・モニター紙(十月二十六日付電子版)で、小沢氏のISAF参加論について「米政府当局者は、非難するのではなく採用すべきだ」と訴えています。

 「大連立」論議の中で出てきた小沢氏のISAF参加論は、正面から明文改憲を論じることを避けながら、国連のお墨付きで海外での武力行使を可能にするもの。米国とともに「海外で戦争する国づくり」へ進もうとする点では、明文改憲路線と変わりません。


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