2007年12月7日(金)「しんぶん赤旗」

イラン核兵器開発停止報告

先制攻撃論に疑問

米・英紙が主張


外交解決強めよ

米紙

 【ワシントン=山崎伸治】イランが二〇〇三年秋以降、核兵器開発を中止しているとした米情報機関による「国家情報評価」(NIE)報告の新たな分析について、五日付米紙はいずれも高く評価しました。これまで危機をあおりながら疑惑国への先制攻撃も辞さないとしてきたブッシュ政権を批判し、問題の外交的解決を主張しています。

 ニューヨーク・タイムズは社説で、ブッシュ大統領が「アメとムチ」を使うと言うなら「包括的会談と本質的な報酬について真剣に提案する必要がある」と指摘。そのためにライス国務長官を派遣すべきだと提案しました。

 フィラデルフィア・インクワイアラーの社説は「イランとの外交の先例は二月に示されている」として、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の合意を指摘。「北朝鮮は外交と制裁の組み合わせにこたえてきた。その解決策をイランでもやってみるべきだ」と主張しています。

 ロサンゼルス・タイムズは社説で、大量破壊兵器に関する誤った情報でイラク戦争を導いたという誤りから「米国の情報機関は教訓を学んだ」とイランの核開発に関する評価の「転換」を歓迎。数週間前にブッシュ氏が「第三次世界大戦」に言及した際は「すべて疑わしい情報にもとづいていた」と批判しました。

 ワシントン・ポストでは、コラムニストのロバート・ケーガン氏が「疑惑のあるイランの核施設に対する軍事攻撃は常に危険をはらんできた。ブッシュ政権にとってその選択肢は消え去った」として、「イランと話し合うべきときだ」と主張しています。

 ボストン・グローブも社説で「ブッシュ大統領らが新しい評価をどのように解釈しようと、イランの核施設に対して急いで軍事攻撃を加えるという議論が弱まることは疑いない」と分析。ブッシュ氏が「イラン政府との包括的な交渉を開始する」ことへの期待を表明しました。

英2紙

 【ロンドン=岡崎衆史】イランが二〇〇三年に核開発を停止したとの米情報機関の報告について、英国の二つの有力紙が五日、米国によるイラン攻撃の根拠が薄れたとして歓迎し、外交解決の努力を強めるよう求めました。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、「イランに対する新しいリアリズムを歓迎」と題する社説を掲載。報告発表は、「テヘラン(イラン政府)に対する外交攻勢を進める機会だ」としました。

 社説は特に、報告がイランの政治的決定だけが同国による核兵器取得を防ぐことができるとしていることについて、「そのような決定を引き出すことが正しい政策だ」と述べ、イランに対する安全の保証や経済関係の樹立による「アメ」と、制裁による「ムチ」の政策の組み合わせによって、イラン問題の解決をするよう求めました。軍事攻撃については、核兵器開発防止につながらないとして否定しました。

 また、イランの民生用原子力利用を否定する米欧のタカ派の議論については、「もはや批判に耐えられない」とし、こうした議論に正当性はないとの考えを示しました。

 ガーディアン紙社説は、報告によって、「先制攻撃の選択肢追求が不可能になった」と述べ、核兵器開発を理由にしたイラン攻撃が正当性を失ったことを強調。「ワシントン(米政府)の主戦論騒ぎは鎮められなければならない」としました。

 同社説はまた、「ワシントンは北朝鮮政策転換による成功から学ばなければならない。平壌(北朝鮮)への関与政策への回帰は成果をもたらした」とし、イラン政策についても、北朝鮮政策同様、強硬路線から外交重視に政策転換を行うよう求めました。


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