2007年12月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

国際学習到達度調査

学ぶ意欲育てる自由と条件を


 経済開発協力機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)の結果が公表されました。対象は十五歳で、日本は高校一年生が二〇〇六年にうけました。

 PISAの調査は、学校で学習した知識量ではなく、知識をもとに思考力や自分で問題を見つけて解決する能力などを見るものです。

 日本の順位の「低落」が言われますが、考えなければならないのは順位よりその中身です。

順位でなく中身が心配

 とくに学ぶことへの意欲の低さが心配です。日本の生徒は科学に興味や楽しさを感じず、「科学を必要とする職業につきたい」と思う割合もたいへん低いのが特徴です。科学への関心は調査した五十七カ国中最低と評価されました。

 今回の調査は「科学」が中心でした。日本の生徒は、さまざまな現象を科学的に説明したり、あるテーマについて科学的調査で答えがでるかどうかを考えるなど論理的な問題が苦手です。また前回調査で増えた成績下位層の割合も大きな変化がありませんでした。

 なぜ、学習への意欲が「ずば抜けて低い」(文部科学省)のでしょうか。何より、「高度に競争的」と国連から勧告されている教育制度の問題に目をむけないわけにはいきません。

 高校受験のため、学習が知識のつめこみになり、一つの「正答」を知ればいいという風潮が顕著です。たとえばテストのため顕微鏡の各部分の名前を暗記、国語は問題文を読まずに設問から正しそうなものを選択する。入試体制がうみだす風景です。

 調査でも「生徒が実験室で実験をおこなう」「先生は習った考え方が多くの異なる現象に応用できることを教えてくれる」と答えた割合は平均の半分でした。「生徒は課題の話し合いをする」はOECD平均42%にたいし日本は9%にすぎません。

 政府や地方行政が学習指導要領などにより教員の教育活動を統制していることも問題です。今回うきぼりになった意欲や関心にしても、文部科学省は「関心・意欲・態度」の点数化を教員に強制してきました。その結果、関心などのチェックに忙しく肝心の授業がおろそかになると教員から悲鳴が上がりました。これで生徒の関心が育つはずがありません。

 学ぶことは繊細な精神的営みであり、教育には自由が欠かせません。統制をもちこめば、教える側、学ぶ側の双方の意欲を損ない、結局は失敗することを政府は知るべきです。

 また教育条件も「四十人学級」などではていねいに教えるには困難です。さらに本格的には、子どもから進学や将来の夢をうばう格差社会の影響など広い視野の検討が必要です。

 文科省は「全国学力テスト」などの競争と詰め込みを強めるなど従来の方針の踏襲を表明しています。財務省は「教員の数が多すぎる」と人員削減すら求めています。しかし目を世界に転じれば、こうした日本の方向に未来がないことは明らかです。

広く世界に目を向けて

 PISA調査で三回連続一位となったフィンランドは、大胆な教育改革をおこなっています。習熟度別学級の廃止など競争教育が大きく見直されました。学習指導要領の簡素化など教員の自由を保障し、教科書も教員が自由に選べます。「二十人学級」にして、学習が遅れている子どもへは特別な体制をとり「一人も落ちこぼさない」が貫かれています。

 政府はひろく世界にも目をむけ、憲法にもとづいて、教育政策をおおもとからあらためるべきです。


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