2007年12月5日(水)「しんぶん赤旗」
OECD国際学習到達度調査
日本、数学的応用力10位
高校1年生 依然「読解力」低下も
経済協力開発機構(ОECD)は4日、2006年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を発表しました。日本は「数学的応用力」が前回(03年)の6位から10位に後退しました。前々回(00年)は1位でした。「読解力」は点数では前回と同じ498点でしたが、順位は14位から一つ下がって15位になりました。
点数はОECD加盟国の平均点が五百点になるように換算したもの。
数学的応用力では一位が台湾の五百四十九点、二位はフィンランドの五百四十八点。日本は前々回一位だったときは五百五十七点でしたが、前回は五百三十四点に低下、今回はさらに十一点減の五百二十三点でした。
読解力は一位が韓国の五百五十六点、二位はフィンランドの五百四十七点でした。
「読解力」では、日本は学力格差が前回からやや縮小したものの、前々回よりは大きく、歯止めがかかっていません。
PISAは知識や技能を実生活にどの程度活用できるかをみることを目的に、三年に一回、義務教育を修了した十五歳の生徒を対象に、ペーパーテストによって実施されています。〇六年はОECD加盟国を中心に五十七の国と地域で約四十万人が参加し、科学的応用力、数学的応用力、読解力の三分野について調査しました。日本では無作為に選ばれた高校一年生約六千人が対象になりました。
日本は先に公表された「科学的応用力」の結果でも前回より十七点減の五百三十一点で二位から六位に後退しています。
解説
効果なかった競争と詰め込み
四日に公表されたОECDの国際学習到達度調査(PISA)は「義務教育修了段階の十五歳児が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価」するものとされています。出題内容をみても、「温室効果」や「酸性雨」など実社会の具体的な問題に、身につけた知識を生かして答えるものが中心になっています。
前回(〇三年)の調査では、日本は「数学的応用力」や「読解力」が低下しているという結果が出ました。これに対し文部科学省は「学力向上」策として、習熟度別学習の推進、「授業時間数の確保」などを進め、四十年ぶりの全国学力テストの実施を決めて各地にいっせい学力テストブームを起こしました。
今回の調査結果は、学習指導要領から重要な学習事項を削減した問題とともに、文科省のこうした競争と詰め込みの「対策」が効果を上げていないことを示しているといえます。上位になったフィンランドは、授業時間は短く、少人数学級にして、子ども同士が学び合うことを大事にしています。
学習指導要領改定に向けての中央教育審議会教育課程部会の「審議のまとめ」は、前回のPISAの結果も念頭に、これからは「活用力」を高めることが必要だとしています。しかし、その「対策」は、例えば「文章や資料を読んだ上で、自分の知識や経験に照らし合わせ、自分なりの考えをA4・1枚(1000字程度)で表現する」など、指導方法を細かく規定し、一律にやらせようというものです。
このような対症療法的なやり方を上から押しつけても問題は解決せず、現場の矛盾を激しくするだけです。少人数学級や教職員増など教育条件の整備と、教師が子どもの実態に応じてていねいな教育活動をできる自由こそが求められています。(高間史人)
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