2007年12月4日(火)「しんぶん赤旗」
ベネズエラ 改憲案を小差否決
大統領
「結果受け入れる」
“現憲法内で社会主義めざす”
【カラカス=松島良尚】ベネズエラで二日、チャベス大統領が「二十一世紀の社会主義」への前進を掲げて提案した憲法改正案の賛否を問う国民投票が実施され、中間集計で反対票が小差で過半数を占めました。開票が進んでも賛否の逆転はないとされ、チャベス大統領は改憲案否決の結果を受け入れると語りました。
全国選挙評議会の三日未明の発表によれば、開票率88%の段階で、反対は50・70%、賛成49・29%。投票率は約56%でした。賛否の票差は実数で十二万票とみられます。
チャベス大統領は敗北を認めた会見で、過去に選挙不正などが繰りかえされたことにふれながら、自分たちが結果を受け入れたことに示される今日の同国の「民主主義の前進」を強調しました。
大統領は、投票や集計活動にたずさわった関係者や賛成票を投じた支持者だけでなく、反対票を投じた人にも明確に意思を示してくれたとして謝意を表明しました。同時に、「49%の人が社会主義に投票したのは政治的躍進だ」と述べ、現行憲法の枠内で社会主義をめざすたたかいを続けると強調。今回の提案は生きており、いっそう深めていくと述べました。
反対派、わい曲宣伝
ベネズエラの国民投票では、反対派が、改正案に「社会主義」の文言があることを取りあげて、「破綻(はたん)したキューバ型国家にされる」「所有権が奪われる」と攻撃を加えて、国民の不安をあおりました。
米国からの資金援助を得て政府批判を続けている市民団体「スマテ」は、「家も車も商店も取られる」という内容の各種ビラを配布。民放テレビ局グロボビジョンも「キューバ型への投票」と改革の内容をねじ曲げる宣伝を連日流しました。
カトリック教会の大司教は十一月十九日、「社会主義者でないものはベネズエラ国民でなくなり、迫害される」と語り、恐怖心をあおりました。
国際的にも、米ホワイトハウス報道官が投票が公正に実施されるかどうかに懸念を表明したほか、米共和党議員からは「ベネズエラでの自由の終焉(しゅうえん)を許すな」などの干渉的発言が相次ぎました。スペインのアスナール右派政権下で内相を務めたマヨール・オレハ氏は十一月十六日、ベネズエラ紙で、反対票を投じるよう公然と呼びかけました。
政府と賛成派は、憲法改正を解説した小冊子を活用して反撃。国民の私的所有権や市民的自由は引き続き保障されると説明。改正の目的は、国の富のより公正な配分にあり、「国民が人間として必要とする要求にこたえる社会を描く」ことだと訴えました。(島田峰隆)