2007年11月30日(金)「しんぶん赤旗」

底無しの疑惑 韓国・サムスン

裏金工作 230億円超す

元法務担当常務が暴露会見


 韓国最大の財閥、サムスングループによる裏金を使って広範囲なロビー活動を繰り広げてきた疑惑が、底なしの様相を見せています。対象は政治家、官僚、検事、裁判官、報道関係者、市民団体活動家など。サムスンの元法務担当常務だった弁護士が二十六日に四回目の暴露記者会見を開き、その内容を詳細に明らかにしました。裏金の総額は二千億ウォン(二百三十億円)以上だといいます。(面川誠)


 サムスングループは二〇〇六年、売り上げ十七兆円(純利益一兆四千億円)を記録。韓国の輸出の25%、税収の8%、株式市場の時価総額の23%、上場企業の総売り上げの15%を占めます。

 「サムスン共和国」という言葉があるほど、その存在感は絶大で、系列企業は就職先としても高い人気があります。その一方、労組の設立を徹底的に妨害し「無労組経営」に固執。さらに、多方面への贈賄の疑惑が絶えませんでした。

 疑惑の詳細を暴露したのは、金勇K(キム・ヨンチョル)弁護士。軍事独裁政権下の一九七〇年代から民主化運動の一翼を担ったカトリック神父の団体「天主教正義具現全国司祭団」の支援を得て、内部資料公表に踏み切りました。

 金弁護士によると、裏金はグループ企業の海外での調達を担当するサムスン物産が海外でねん出。この裏金が各界への工作資金に使われたといいます。グループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長の指示とされる文書には、政治家への現金や贈答品の渡し方、サムスンが被告となった裁判での裁判官や検事の買収策、メディアにサムスンに有利な記事を書かせる方法、市民団体への寄付金を通じた懐柔策などが記されています。

 ロビー対象の実名は、林采珍(イム・チェジン)検察総長など、ごく一部しか公表されていません。これまで「聖域」といわれてきたサムスンの暗部の全容が明るみに出れば、政界をはじめどこまで飛び火するか予測不可能です。与野党とも大統領選挙に想定外の影響を与えかねないと警戒しています。

 国会はすでに、疑惑を解明するために特別検察官を任命する法律を可決。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は「対象があまりに広範囲で、あいまいな疑惑も含まれている」として拒否権発動を考慮しましたが、特別検察官任命を支持する世論を考慮して二十七日、立法を受け入れると表明しました。

 金弁護士は二十七日、自ら検察に出頭して内部資料を提出。検察は李会長など主要人物の出国禁止措置をとりました。問題は、ロビー対象に検察幹部も含まれているため、捜査に対する国民の信頼がないことです。捜査は来月にも独立検察官に引き継がれます。


 サムスングループ 総資産二百六十兆ウォン(三十兆円)を誇る韓国最大の企業グループ。前会長の李秉K(イ・ビョンチョル)氏が一九三八年に創業した三星商会が前身。戦後、経営の多角化を進め、六三年には、三大紙の一つとなる中央日報を創刊しました。六九年には、日本企業との合弁で現・サムスン電子の前身企業を設立。機械、重工業、化学事業にも次々、進出しました。傘下企業には、高級ホテルとして知られる新羅ホテルや遊園地のエバーランドなどがあり、野球やサッカーのプロ球団も保有。


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