2007年11月30日(金)「しんぶん赤旗」

与党の児童扶養手当削減凍結

気になる「就業意欲判断」


 収入の低い母子家庭に支給されている児童扶養手当について、与党は来年四月からの削減を実質的に凍結しました。世論と運動が勝ち取った重要な成果です。しかし、与党合意には「就業意欲」の定義や「凍結」期限など不明確な部分があり、監視が必要です。

 与党合意は、母子の障害や病気など「就業が困難な事情がないにもかかわらず、就業意欲がみられない者」についてのみ、児童扶養手当の支給額を半減するとしています。

 ひとり親家庭の支援などを行うNPO法人ウインク理事長・新川てるえさんは、「『就業意欲』が何をもって判断されるのかというのが、当事者がいちばん気になるところです。『就労活動をしているが、なかなか決まらない。二、三カ月仕事に就いていなければ意欲がないと見られてしまうのか』などの疑問が、会員からたくさん上がっています」と語ります。

 この疑問について、与党プロジェクトチームの自民党参院議員は、「ハローワークに行って求職登録をした人や、市町村の就業支援センターなどに相談に行った人など」を、就業意欲があると判断される例として挙げました。さらに、「紹介を受けたものを断った場合も、断った事情が勘案される。ケースバイケースの判断だ」と述べ、「『就業意欲がない』ということで切り捨てられる人は、そう出ないだろう」との見方を示しています。実際の運用でも、切り捨てにつながらないようにさせることが必要です。

 もう一つの問題は、「凍結」の期限です。今回の与党合意にそって政令が改定されれば、政令が再改定されない限り「凍結」は続きます。ただ、五年前に改悪された母子及び寡婦福祉法そのものは、“手当受給開始から五年たち、末子が八歳以上に達した人については最大二分の一まで手当を削減する”と明確に定めています。与党は「自立を促すという立法の趣旨は正しい」として、法律そのものの改定を行おうとはしていません。

 この点について先の参院議員は、「片方で『手当はずっと出します』といいながら、片方で自立支援のための予算を上乗せするというのは、財政当局はたぶん認めない。予算も全体的に厳しいなか、やむを得ない」と述べました。財政状況でいくらでも変わりうる危険があるのです。

 母子家庭の実態を無視した児童扶養手当の大幅削減の矛盾が明らかになった以上、「凍結」でごまかすのではなく、撤回するのが筋です。

 撤回へ向けた国会の力関係も変わりつつあります。五年前には手当削減を含む法改悪に賛成した民主党も、削減条項を削除する児童扶養手当法改正案を国会に提出する方針です。

 日本共産党は、児童扶養手当の削減方針を完全に撤回することを求めています。大企業・大金持ちへの減税の大盤振る舞いや巨額の軍事費などにメスを入れれば、財政的にも十分賄えます。(坂井希)



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