2007年11月28日(水)「しんぶん赤旗」

「集団自決」軍強制

沖縄戦研究の共通認識

専門家が意見書公表

検定意見撤回求める


 沖縄戦「集団自決」をめぐる記述で教科書会社六社が出した訂正申請について、教科用図書検定調査審議会(文部科学相の諮問機関)が沖縄戦の専門家として意見を求めていた研究者の一人が二十七日、同審議会に提出した意見書を公表しました。「『集団自決』が日本軍の強制と誘導によって起きたことは沖縄戦研究の共通認識」とし、軍の強制性を削除させた検定意見を撤回するべきだとのべています。


 意見書を公表したのは関東学院大学の林博史教授。同教授によると、今月十六日に意見提出の依頼を受け、二十二日に意見書を郵送しました。文科省は公表しないよう求めましたが、同教授は「秘密裏に検定をおこなうことこそが、今回のようなわい曲された検定がなされた原因である」と考え、自身のホームページで全文を公開しました。

 文科省は、「集団自決」の記述から軍の強制を削除する検定意見を出すにあたって、林教授の著書『沖縄戦と民衆』を根拠の一つにあげていました。林教授は意見書で、同書は「隊長から自決せよという形の自決命令は出されていないと考えられる」などの記述をしているが、結論的部分で「集団自決」は「日本軍による強制と誘導によるものであることは…明確」とするなど、軍に強要されたものであることを繰り返し記述していると指摘。検定意見の根拠にしたことは「全体の結論を無視して、一文のみを持ってきたとしか考えられない」とのべ、審議会への抗議を表明しています。

 意見書ではまた、命令の有無と強制とは「明らかにレベルの異なる問題」であり、捕虜になることを許さない日本軍の教育・宣伝、米軍につかまると残酷な扱いを受け殺されるという恐怖心の扇動、あらかじめ手りゅう弾を配って自決せよと言い渡していたことなど、「日本軍はさまざまな方法を使って住民を『集団自決』に追い込み、強制していった」とのべています。とくに手りゅう弾を配り自決するようにいったことは「住民にとっては命令としか受け取れなかった」とし、「実質的には日本軍による命令だというしかない」としています。

 林教授は「審議会は訂正でごまかすのでなく、検定意見を取り消して、日本軍の強制性を明記した記述を認めるべきです」と話しています。

 検定審議会はほかにも専門家の意見を聞くとしていますが、名前は明らかにしていません。



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