2007年11月24日(土)「しんぶん赤旗」

主張

福田外交

日米とアジアは“共鳴”するか


 福田康夫首相が、先週末首相就任後初の外国訪問としてアメリカを訪れたのに続き、今週はシンガポールを訪問し、東南アジア諸国連合(ASEAN)との会合や、中国、韓国などとの初めての会談に出席、アジア外交の第一歩をふみだしました。

 日米同盟強化を目指しながら、アジアの声に応えられるのか、福田首相の外交が問われています。

「靖国」派路線の破たん

 日中会談では中国の温家宝首相が「両国関係を絶えず前進させたい」とのべ、日韓会談では韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が「韓国国民は福田総理に大きな期待を寄せている」とのべたように、アジア諸国は福田外交に注目しています。

 靖国神社の参拝に固執した小泉純一郎元首相のもとで、長期にわたって首脳会談が開けないほどアジア外交は停滞し、安倍晋三前首相のもとでも、侵略戦争の正当化が原因になってぎくしゃくしました。それにくらべ、福田首相が好意的に受け入れられているのは、首相が「靖国神社に参拝しない」と表明し、「靖国」派路線をとらないことを明らかにしていることが背景になっていると見てまちがいありません。

 七十数年前、日本は一方的にアジアを侵略し、二千万人もの人々の命を奪いました。他国からいわれるまでもなく、日本政府みずから侵略の事実を認め、心から謝罪するのが外交のけじめです。小泉政権以来ここ数年の日本外交の足取りは、侵略戦争の正当化とアジア外交は両立しないことを誰の目にも明らかにしています。

 「靖国」派路線は変えても、福田首相に侵略戦争への明確な反省がなければ、再びアジアの人々が懸念することにもなります。首相は外交をすすめるにあたって、侵略戦争への反省を明言すべきです。

 福田首相は今回のアメリカとアジアへの歴訪のなかで、日米同盟を強化しながら、アジア政策と「共鳴」(シナジー)させるという考えを繰り返しました。アジア政策の具体的な中身は「ドクトリン」などの形で明らかにされていませんが、日米同盟を前提に、軍事力をテコにした外交をアジアに押し付ければ、「共鳴」するどころか矛盾を広げることになるのは目に見えています。

 今回開かれたASEANの首脳会議が決定した「ASEAN憲章」は、「侵略、脅迫、武力による威嚇とその行使の拒絶」、「紛争の平和的解決」を軸とした平和原則を明記しました。ASEANは東アジア共同体づくりの中心であり、その平和原則は東アジアの平和な共同体づくりの原則につながります。

 日本が日米同盟を盾に、この平和原則に反したのでは、ASEANばかりかアジアとのつきあいは困難です。自衛隊を海外に派兵し、憲法九条を改悪して、日本を「海外で戦争できる国」に変える政策が、日本のアジア外交の障害になるのはあきらかです。

憲法を生かしてこそ

 アジアとのつきあいで重要なのは、アジア人の手で平和なアジアをつくろうとしている各国の努力です。地理的にはアジアに属す日本が政治的・外交的にもアジアの一員として役割を果たしていくのは当然です。

 日本は侵略戦争の反省から戦争放棄の憲法をつくりました。平和の共同体を目指すアジアの動きは、憲法の願いにもそった動きです。憲法九条を生かし、アジアで平和の流れを後押しすることこそ、日本外交にとって決定的に重要な課題です。


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