2007年11月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

政府税調答

消費税増税路線の転換を


 首相の諮問機関の政府税制調査会(香西泰会長)が、来年度税制改定の答申をとりまとめました。

 答申は消費税が社会保障の持続可能性を支えるのに「ふさわしい財源」であるかのように描き、「消費税が重要な役割を果たすべきである」と主張しています。

支離滅裂な暴論

 政府税調の答申は、昨年に続いて「格差拡大」に言及しました。その上で税制の所得再分配機能の低下を踏まえ、税制も「それ自体として再分配機能を適切に発揮していくべきである」とのべています。

 所得に対する逆進性が強い消費税を税制の中心に据えることは、税制の所得再分配機能を根底からくつがえす暴論であり、答申は支離滅裂というほかありません。

 この点を取り繕うことに答申はページを割いています。

 例えば社会保障給付と消費税負担の全体で所得再分配を考える必要があるとしていますが、こんなことを持ち出すことそのものが、消費税は「それ自体として再分配機能を適切に発揮」できないことの証明です。

 ほかにも「消費は…生涯を通じた経済力をより正確に反映している」から、「消費税は、むしろ負担の公平に資する」というくだりがあります。高所得者ほど所得から貯蓄に回す割合が多く、低所得者ほど消費に回す割合が高い事実を無視した、一部の経済学者の仮説によりかかった意味不明の議論です。消費税が低所得者ほど所得に対する負担が重いという明白な現実を、さかさまに描こうとして墓穴を掘っています。

 与党が消費税増税の時期を先送りする姿勢を見せていることから、答申は消費税増税の時期や税率については明らかにしていません。

 町村信孝官房長官は、次の総選挙で消費税増税を争点にすべきではないと強調しています。

 先の参院選では当時の安倍晋三首相が「消費税を上げないなんて一言も言っていない」と言いつつ、国民に審判を仰ぐのは「次の衆院選で」と身勝手な姿勢に終始しました。福田内閣は衆院選でも争点にしないと言い出しています。

 消費税は一九八九年に導入されたときも、九七年に増税されたときも、与党が国政選挙でまともに国民の審判を仰いだことが一度もない税制です。政府税調が主張するように、消費税がそんなにいい税制だというなら、堂々と具体的な計画を明らかにして国民に信を問うべきです。

 それができないのは、どう取り繕おうとも、根本的に消費税増税論に道理がないからにほかなりません。

 政府税調は二〇〇〇年の「中期答申」で消費税率引き上げを打ち出し、それ以来、消費税増税の必要性を主張し続けてきました。最近も、マスメディアを巻き込んでキャンペーンを強めています。しかし、「社会保障費の財源を確保するため」に消費税率を引き上げることに賛成か反対か、という“誘導質問”にさえ、反対が多数を占めています(NHK、「朝日」の世論調査)。

2つの聖域にメスを

 具体的な計画を明らかにできず、国民に審判を仰ぐことさえできないのなら、政府・与党は消費税の増税をきっぱりとあきらめることです。

 財界やアメリカ、軍需産業の「聖域」に踏み込み、大企業や大資産家など負担する余力があるものに相応の負担を求め、五兆円に上る軍事費の無駄にメスを入れる本当の意味での改革に踏み出してこそ、くらしと財政を立て直す道が開けます。



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