2007年11月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

クラスター爆弾

禁止条約づくりを急ぐべきだ


 特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)の締約国会議(加盟百二カ国)が先週、クラスター爆弾についての「交渉入り」を決めました。

 ことし二月の有志国によるオスロ(ノルウェー)会議以来、二〇〇八年末までに禁止条約を作成するという有志国やNGOによる「オスロ・プロセス」が本格化しています。クラスター爆弾規制の論議にさえ消極的だったCCW締約国会議が、「交渉入り」を合意したのは、「オスロ・プロセス」に押されてのことです。しかし、合意は玉虫色といわれます。締約国の態度が問われています。

進展する国際努力

 クラスター爆弾は、一つの親爆弾から数百個の子爆弾がばらまかれ、戦車や部隊を一度に壊滅させるものです。子爆弾の不発率も高く、拾い上げ握り締めたとたんに爆発するため、子どもをはじめ多くの民間人を殺傷します。アメリカなどがいうように不発率を下げても、不発弾がなくなるわけでも残虐性がなくなるわけでもありません。「改良」でなく、全面禁止を求める声が国際社会の大勢になっているのは当然です。

 「オスロ・プロセス」は着実に進展しています。五月のリマ(ペルー)には二月のオスロ会議(四十九カ国)を大きく上回る六十八カ国が参加しました。来月予定のウィーン会議(オーストリア)にはさらに多くの参加国が見込まれています。地域的会議もコスタリカでの中南米会議(七月)を皮切りに、ベルギーでの欧州会議、エジプトでの中東会議、マリでのアフリカ会議が続きます。

 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、今回の締約国会議に送った声明で、クラスター爆弾が「国際人道法への重大な挑戦」と強調し、「使用、開発、製造、貯蔵、移転を禁止すべき」だと公式に要求しました。禁止条約ができるまで「ただちに使用・移転を凍結」することも求めています。国連の組織であるCCWは、事務総長声明を正面から受け止め、禁止をめざすべきです。

 問題は、CCW締約国会議がクラスター爆弾の禁止を「交渉」の目標にしていないことです。アメリカは、不発率がいまより低い新型爆弾を開発・配備することで温存政策をつらぬく考えです。加盟国のなかで少なくない国が禁止措置を要求しても禁止措置が議論にならないのは、日本をふくめたクラスター爆弾を保有する少なくない国が抵抗しているからです。決定方法も全会一致制です。そのため、CCW締約国まかせにしておいては全面禁止条約づくりの展望は開けないのが実態です。

 大事なのは、「オスロ・プロセス」を進展させ、二〇〇八年末までに禁止条約をつくってCCW締約国の背を押すことです。アメリカなどが反対したため当初は困難視された対人地雷禁止条約も、CCW締約国会議の外で広がった「オタワ・プロセス」が決定的な力になりました。クラスター爆弾禁止条約づくりも、「オスロ・プロセス」を進展させることが大きな力になるのは明白です。

温存政策やめるとき

 重大なのは日本政府の態度です。「全面禁止」は「実効的な対応とはならない」(六月の専門家会合での政府発言)と禁止条約づくりに正面から反対しています。これでは日本は国際社会で孤立を深めるだけです。

 クラスター爆弾の禁止条約づくりは憲法で戦争を禁止した日本が率先してやるべき仕事です。自衛隊がもつクラスター爆弾の使用を禁止し、「オスロ・プロセス」にそって、禁止条約づくりをめざすべきです。


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