2007年11月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米軍再編交付金

国策に従わせるテコにするな


 防衛省が先月三十一日、米軍再編交付金を交付する自治体として三十三自治体を指定する一方で、基地再編に反対する自治体をすべて排除したことに怒りが広がっています。

 地方の財政危機につけこんで、自治体に札束をちらつかせ、国策に従わせるのはきわめて卑劣なやり方であり、認めるわけにはいきません。

押し付けの道具

 防衛省は、再編交付金を交付する自治体の指定にあたって、基地再編を受け入れていない神奈川県座間市、山口県岩国市、沖縄県名護市、金武町、宜野座村、恩納村を指定から排除しました。

 地域の安定と住民の安全に責任をもつ自治体が、基地被害を増幅させる基地再編強化の押し付けに反対するのは当然です。再編に反対する自治体を見せしめにするような強権的なやり方が民主主義のもとで許されるはずはありません。

 再編交付金制度は現在の基地交付金制度とも異質です。現在の制度は、基地があることによる環境悪化、自治体や地域住民の損害への補償という意味で配分されています。

 しかし、再編交付金は、(1)米軍基地を受け入れたか、(2)アセスメントに応じたか、(3)着工に応じたか、(4)完了したか―という四段階にわけ、進ちょく状況に応じて、自治体が協力したかどうかを政府が一方的に判断して、交付金を配分するものです。自治体を国策に従わせるテコにするのが政府の狙いです。

 もともと米軍再編は、世界各地でアメリカが先制攻撃戦争を行うための新たな拠点づくりが狙いです。基地再編の受け入れは、アメリカの軍事介入を助長することにもつながります。侵略戦争を反省し、憲法で戦争放棄をうたう日本国民が戦争態勢づくりに反対するのは当然です。

 しかも基地の再編によって「基地の痛み」は確実に増幅されます。自治体が反対したからといって交付金を配分しないということは、住民に与えた被害の補償はいっさいしないということにもなります。

 岩国基地には厚木基地(神奈川県)から米空母艦載機五十七機をはじめ米軍機が追加移駐します。騒音と墜落の危険、米軍犯罪の激増で市民の苦痛が増すのは必至です。井原勝介市長が政府に再編中止を求めているのは市民の悲痛な思いを代弁したものです。政府がこの訴えを正面から受け止めるのが道理です。

 座間市もキャンプ座間の返還を要求しています。市民の意思を代表して星野勝司市長が基地恒久化解消策を求めているのに、「実現不可能」といってつっぱね、指定から排除するなど言語道断です。沖縄も同じです。

 政府は、住民を代弁して基地再編に反対する自治体を札束で変節させる卑劣なやり方をやめるべきです。

地方自治の原則を守れ

 重大なのは、政府のやり方が憲法の定める地方自治の原則をふみにじっていることです。地方自治の原則は、自治体を戦争政策の手足にした過去の誤りの反省のうえに明記されました。米軍再編に反対したからといって交付金を交付しないのは、自治体を国策に従わせ多大の犠牲を住民に押しつけた、戦前の天皇制政府の過ちと同じ発想です。地域住民の生活を守るために自治体が国策を批判し反対するのは当然です。自治体を脅すやり方がこんにち許されるはずはありません。

 再編交付金というアメとムチで自治体を脅しつけ、米軍基地の再編強化を強要する卑劣なやり方を政府はやめるべきです。



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