2007年11月7日(水)「しんぶん赤旗」

主張

高齢医療負担増

一部延期では解決にならない


 小泉内閣以来、年金課税の強化や老年者控除の廃止、国保料・介護保険料の値上げ、医療の窓口負担増と、とりわけ高齢者に冷たい政治が続いています。

 来年四月からの「後期高齢者医療制度」は一連の高齢者いじめの極みです。自民党と公明党が、その負担増の一部凍結で合意しました。

 与党の合意は負担増の一部を先延ばしにする一時しのぎです。同時に、世論が政権を追い詰めて、実際に政治を動かす可能性が広がっていることも示しています。

激変緩和措置の手直し

 自公の合意は(1)新制度導入に合わせて始める七十歳から七十四歳の窓口負担増(一割から二割へ倍加)を一年延期(2)七十五歳以上の「被扶養者」が新制度で負担を迫られる保険料を半年凍結、後の半年は保険料を一割に減額する―というものです。

 後期高齢者医療制度は七十五歳以上の人を「後期高齢者」と呼び、ほかの世代と切り離して際限のない負担増に追い込むとともに、受けられる医療も制限します。

 負担増は過酷です。国会審議の中で、後期高齢者の保険料(所得割と均等割の合計)が、全国平均で年八万円を超えるおそれもあることが明らかになっています。都道府県ごとに決まる保険料は、北海道、埼玉、東京などでは平均で年九―十万円程度にも上ると試算されています。

 被扶養者として健保に加入している人の場合、新たな保険料がまるまる負担増になります。国保から移される人の保険料負担も、東京の試算では二十三区で最大一・六倍、市町村で一・四倍に膨らみます。

 与党合意の保険料凍結は被扶養者にかかわる部分だけで、国保から移される人など大多数の負担には配慮がありません。もともと被扶養者の保険料は、当初の二年間、保険料の所得割を凍結し、均等割を五割に抑える「激変緩和措置」が法律に盛り込まれています。与党合意は激変緩和措置の手直しにすぎません。

 新制度は保険料を二年ごとに見直し、医療給付費の総額が増えても、後期高齢者の人口が増えても保険料を引き上げます。将来の保険料の値上げを自動化するような、情け容赦のない仕組みです。

 その保険料を、月一万五千円以上の年金受給者からは介護保険料とともに「年金天引き」にします。これに便乗し、六十五歳から七十四歳の国保料も「年金天引き」に変わります。高齢者の生計費から有無を言わせず取り立てて、生存権をおびやかすやり方です。

制度そのものを中止に

 政府・与党は「世代間の公平性確保」「高齢者に応分の負担」など、依然として制度自体の目的を正当化しています。

 だれしも高齢になるほど病気がちになり、いくつかの病を併発することも珍しくなく、必然的に医療費はかさみます。それを無視して負担をそろえることは、現実には不公平そのものです。負担増は「応分」の域をはるかに超えています。生活基盤の弱い高齢者が現役並み負担を強いられ、おいそれと病院にいくこともできなかった四十年前に逆戻りさせるような時代錯誤の制度です。

 弱い立場の国民には過大な負担を迫る一方で、空前の利益を上げている財界・大企業には過分の減税を続けるというのは、弱いものいじめ以外のなにものでもありません。

 部分的な凍結に終わらせず、後期高齢者医療制度そのものを中止に追い込むために、いっそう世論を広げようではありませんか。


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