2007年11月5日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
スピリチュアルってどう?
女どうし座談会
「今なぜ スピリチュアル?」(9月24日付)の記事に、多くの反響がありました。スピリチュアル(霊的・精神的)第2弾として、関心のある3人の女性に集まってもらい、柿田睦夫記者を交えて座談会を行いました。
――本紙の100人アンケートでは6割近い青年が「霊」を信じていたけど、皆さんの周りはどうですか?
霊はいるのかな
和美 私は、「生きかえり」は信じないけど、霊はいるのかなって思う。小さいころ、身近な人が亡くなって…。大変なとき、その人が周りにいるような気がして、がんばれた経験がある。
あやね うちは理系の大学なんだけど、非科学的なことを信じてる友達、多いよ。身体測定のとき「自分が羽だと念じれば軽くなるんだよ!」って本気で信じてる子がいて。(笑い)
あき 私はクリスチャン系の神大学だったの。朝の礼拝で「神に感謝しなさい」って、疑問だったなぁ。聖書の授業で「人間は神様のろっ骨から作られた」って信じている人もいたし、「進化論」を信じない人もいた。
――読者の反響では、「一概に否定しないで」という意見もありました。
どういう意味?
あやね そもそもスピリチュアルって、どういう意味なんですか?
柿田 キリシタン用語に「スピリツ」(霊・精神)という語があってね。スピリチュアルもヨーロッパでは宗教的な意味で使われている。ところが日本では違い、昔からあった「霊界、たたり、占い」といった意味にすりかえてしまったんやね。占い師や霊能者もスピリチュアルカウンセラーと呼べば、何か違うイメージになるやろ。
和美 なるほど。
――「占い」はどう?
“人生の応援団”
あき 本屋でバイトしてたとき、細木数子さんの本は本当によく売れてた。Dr・コパの風水とかも。血液型占いとか星座占いとか、毎朝テレビでやってるじゃない。
和美 細木さんの本は私も読んだよ。「運気が下がっているからうまくいかなかった」なんて書かれていると、「当たってる」と思っちゃう。
あやね 占いは、人生が受動的になっちゃう気がする。「運命だからしょうがない」って。
和美 でも迷った時、占い師に「最後のひと押し」をしてもらうのは、ありなんじゃない?
あやね 友達や家族じゃなくて、自分のことも相手のことも知らない人に?
和美 友達も忙しそうだし、相談できる人がいない時ってあるじゃない。あまりにも不幸なことが重なると、考えるのがつらくなるし。
柿田 本格的な占い師はたくさんの人生を見ているから、“人生の応援団”になってもらえることもあるかもしれんね。
――アンケートでは「唯物論はつまらない」という意見もありました。
「なぜ」と考える
和美 私は、世の中のすべてがわかってしまうより、何か不思議なことがあったほうが面白い気もするけど。
柿田 科学とは何かということだと思う。辞書を引くと「一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。またはその成果の内容」といったことが書いてある。世の中には科学の対象になるものと、そうでない領域とがあるんやね。「優しい」とか「美しい」を科学で証明できる?
あき 無理ですよね、感覚の問題だもん。
柿田 科学の及ばない領域に科学を持ち込もうとしたり、科学的事実かのように教えこもうとするからわからなくなる。オウムや統一協会のような「カルト」も同じ手法を使ってるんだよ。
あき テレビでも、それをごちゃまぜに報道してるよね。
柿田 テレビは公正な報道をしなければいけないんだから、もっと責任をもってほしいな。実際はカウンセラーがそう「感じている」ことを、さも普遍的な事実かのように断定的に使っている。最近は「科学的に証明されていない」というテロップを流す局もあるけれど、それでも不十分だと思うね。
あき そうですね。
柿田 もう一つ。世の中には「わからない」ことがたくさんある。それを霊とか占いで解決するのでなく、「なぜだろう」と考えてみることが大切かもしれんね。
あやね 自分で考えて、自分の欠点を認めるのって自己肯定感が必要だと思う。一つの欠点を人格の全否定につなげてしまわないように。
和美 “ダメな自分”でも受け入れてもらえたり、相談できる人がいるって大事だよね。解決の方向が見えるとか、そういう環境があればいいね。
あやね 「運命なんだ」って思考停止しないで、いっしょに考えようよって「おせっかい」も必要だよね。
――皆さん、今日はありがとうございました。
出席者
古川 あき (28) 福祉施設職員
三橋あやね (22) 大学生
町田 和美 (29) 事務職員
=3人とも仮名
柿田 睦夫 (本紙社会部 主な著書に『現代こころ模様―エホバの証人、ヤマギシ会に見る』、『現代葬儀考』など)
司会 平井 真帆 (本紙社会部)
(敬称略)
お悩みHunter
マスコミへ就職希望 高額講座にビックリ
Q マスコミ業界への就職活動を始めたばかりです。インターネットで見たら、テレビ局などが、かなり高額の講座をやっていて、びっくりしました。就活もカネ次第なんかなあって。アルバイトでぎりぎりの生活をしている身では、無理なんでしょうか。(21歳、女性。東京都)
業界も多様 焦る必要なし
A せっかく就活を始めたのに、これではタメ息が出ますね。確かにテレビ局の講座は高額です。キー局のアナウンサーなど、3年の夏には試験です。対応も早くしないと間に合いません。
しかし、これらはあくまでも一部のテレビ界の実態です。マスコミ界すべてではありません。
今やタレント化した「女子アナ」を目指すのであれば別ですが、マスコミ界と一口にいっても多様です。焦る必要はありません。
また、就職「対策学習」だけで合格できるほど甘くもないようです。一番大切なのは、マスコミ人としてどう社会と向き合い、何を発信したいのか、自分の生き方といかにかかわらせるのかです。
「表面的な対策よりも、自分の考えをしっかり持つことが大切」
私の授業の受講生に、全国紙のある記者の方が、自らの体験を語ってくれたことがあります。現に、マスコミ界に就職した身近な卒業生たちは、自分の学生生活を楽しみ、活躍していました。
ですから、一部の現象だけに目を奪われて惑わされるのではなく、いかに仕事にかかわり自己実現したいのか、多様なメディアも含めて就活すべきでしょう。
高額な講座などに頼らなくても大丈夫。これまでの生活・学習体験からつかんだことに確信を持ちましょう。同時にもっと情報収集に努め、自分らしいやり方、勉強法を工夫しましょう。
必ず突破できますよ。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高二十二年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。