2007年11月5日(月)「しんぶん赤旗」
パキスタン 憲法停止
最高裁長官解任、首都に軍
【ニューデリー=豊田栄光】パキスタンのムシャラフ大統領は三日夜、「非常事態宣言」を全土に発令し、憲法を停止しました。発令理由として同大統領は、自爆攻撃やテロを含む反政府イスラム武装勢力の攻勢と、司法の権限を逸脱したとする最高裁判事の行政府への介入をあげました。
治安部隊は最高裁を包囲し、チョードリー最高裁長官は解任され、警察によって自宅に連れ戻されました。後任にはドガール判事が任命され、三日のうちに宣誓、就任しました。首都イスラマバードの主要道路には軍隊が展開、携帯電話など通信網は一時使用不能となりました。
ムシャラフ大統領はメディア規制令も発令し、政府や軍の批判を事実上禁止。軍は放送局にも乗り込み、民放テレビ局では令状なしに機材を押収しました。放送も一時中断しました。
ムシャラフ大統領は同日深夜、国営テレビで国民向け演説を行い、「テロと過激主義が頂点に達している」「国を自滅させることはできない。八年間続けてきた民主化への移行を維持するため、このような行動をとらなければならなかった」と語りました。
ムシャラフ氏は一九九九年、軍事クーデターで政権を掌握。大統領信任国民投票、総選挙、州議会選挙を実施し、女性に不利なイスラム法を破棄し、新たに女性保護法を制定するなど世俗的な民主化にも取り組んできました。
しかし、米国の「テロとのたたかい」で協力していることへの反発から、イスラム過激派が台頭し、武力攻撃も増えてきました。特に治安部隊が強行突入した首都のモスク(イスラム礼拝所)立てこもり事件(七月)以後は、国内各地で自爆攻撃が起き、アフガニスタン国境付近では軍隊と武装勢力の戦闘が激化しています。