2007年11月5日(月)「しんぶん赤旗」

主張

食品偽装

行政は不信の拡大断ち切れ


 食品の偽装・不正の発覚が続き、報道を目にしない日が無いほどです。

 老舗といわれる名店、地域を代表する新興企業、トップブランドの大手メーカーまで、不正は全国いたるところにとめどもない広がりようで、多くの消費者は「何を信じたらいいのか」というやりきれない思いをさせられています。

「もうけのためなら」

 消費期限や賞味期限の改ざん、売れ残り品の再出荷、原材料の偽装など手口は悪質です。摘発された会社は、まず指摘された事実をしぶしぶ認め、その後の調査で、底無しのずさん経営が明らかになるのもお決まりです。「消費者に分かるはずがない」という甘えやおごり、「もうけのためならなにをやってもいい」という発想が蔓延(まんえん)しており、消費者への責任を欠く企業道徳が厳しく問われることはいうまでもありません。

 一連の不正について若林正俊農水相は「企業のコンプライアンス(法令順守)の問題」などと、責任を企業に求める発言を繰り返しています。しかし、行政のトップがもっぱら企業モラルの問題と認識し、自らの責任にほおかぶりするのは疑問です。

 偽装表示の規制は、農水省の所管するJAS(日本農林規格)法、厚労省の食品衛生法、公正取引委員会の景品表示法などが根拠となりますが、行政が縦割りで、相互の連携はまったくといっていいほどありません。それぞれの担当者も少なく、保健所の統廃合で地域の監視体制はむしろ弱まっているといわれ、内部告発でも無ければ偽装の発見などできないというのが実態です。

 事実、北海道のミートホープ事件では、農水省が調査に動いたのは最初の内部告発の一年四カ月後でした。保健所は、告発をもとに五回の立ち入り調査をしても偽装を発見できませんでした。JAS法自体にも、業者間の売買での表示は規制していないという大穴があり、農水省は大慌てで法改正に着手するという状況で、行政は常に後手後手です。

 一九九五年まで「製造年月日表示」だったのを、いまの「期限表示」に改めたことの是非にも議論があります。JAS法の運用でも、よほど悪質でなければ「指示」「命令」などの処分にとどまり、懲役や罰金などが科されることはまずありません。あまりに業界寄りで、消費者保護のためのものとなっていないのです。

 二〇〇〇年の雪印乳業の食中毒事件を機に世論が高まり、国会は〇三年に国民の「健康保護」と「食品の安全確保」を明記した食品安全基本法を成立させました。しかし、政府は総合的な食品安全確保の対策を確立させるどころか、規制撤廃路線のなかで、事業者への監視や消費者の救済に実効ある対策をとってきませんでした。それが、今回の事態の大きな背景になっていることは見逃せません。

消費者の立場で

 日本共産党は国会で、食品の安全対策の強化を一貫して求め、偽装の一掃のために、独立行政法人まかせの食品表示の検査を国の責任で行うこと、その予算確保や必要な法整備、内部告発への対処の迅速化などを具体的に要求してきました。

 福田首相は今国会の所信表明演説で「消費者の立場に立った行政により食品の安全、安心を守る」とのべました。それを実行に移すべきです。

 食の安全にとりくむ消費者のさまざまな運動も、全国で営々ととりくまれています。そうした力とも結び、国民の命と健康を守る国の責任を果たすべきです。


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