2007年10月31日(水)「しんぶん赤旗」
東大の授業料免除制度 どう考える?
〈問い〉 東大が授業料免除制度をつくりましたが、予算の少ない地方の大学ではマネできないのではないでしょうか? どう考えますか? (北海道・一読者)
〈答え〉 東京大学は、親の年収がおよそ400万円未満なら、だれでも授業料(年53万5800円)を全額免除する制度を来年度から導入します。新入生だけでなく在校生も対象としており、1割以上の学生が免除になると見られます。経済的理由で大学進学をあきらめたり、退学に追い込まれたりする若者がふえているなかで、注目されています。
国は、国立大学に対する運営費交付金の中で、授業料収入の5・8%、入学料収入の0・5%を減免枠の財源として措置しているだけです。各大学が、これによって減免した総額は、2004年度で171億円(国立大学生の約5%の授業料分)でした。財源が乏しいために免除枠が狭く、基準も厳しいため、申請しても不採用になる学生が毎年数万人にのぼっています。
東京大学は、この現行の免除制度に加え、大学独自の財源で新しい免除制度をつくり、免除の枠を広げようとしています。
しかし、多くの大学は、東京大学のような独自の財政力を持っているわけではありません。国からの運営費交付金が毎年1%削減されているもとで、教育研究の経費さえままならない厳しい緊縮財政を強いられているのが現実です。
私立大学の学費減免制度はさらに狭く、減免実施総額はたった112億円です(04年度)。このうち国が、私学助成のなかで支援しているのは、33億円にすぎません。私立大学の学生数は、国立の3・3倍なのに、国が措置している免除額は6分の1にとどまっています。
すべての大学で免除枠を拡充するには、国立大学への運営費交付金の削減をやめて充実をはかり、授業料等の免除措置を拡充する必要があります。私立大学に対しても、同程度の免除枠を確保できるよう、私学助成を抜本的に増額すべきです。
いま、貧困のひろがりのもとで、大学進学をあきらめたり、退学に追い込まれたりする――「教育難民」「大学難民」ともいえるような若者がふえています。実際に、所得の低い家庭の大学進学率が、所得の高い家庭の進学率よりも低くなっています。私立大学では、毎年1万人を超える学生が、経済的理由によって退学しています。
憲法26条は「すべて国民は…その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めています。政府は、この国民の教育を受ける権利を保障するために、対策をこうじる責任があります。(誠)
〔2007・10・31(水)〕