2007年10月31日(水)「しんぶん赤旗」
与党チーム
高齢者医療負担増の「一部凍結」
世論恐れて修正合意
高齢者医療費に関する与党のプロジェクトチーム(鈴木俊一座長)は三十日、(1)二○○八年四月に予定していた七十―七十四歳の窓口負担の一割から二割への引き上げを、一年先送り(2)七十五歳以上の被用者保険の被扶養者が同月から新たに負担する保険料も半年間凍結し、続く半年間は一割に減額する―ことで正式に合意しました。
今回の合意内容の実施には、窓口負担の据え置きで約千百億円、保険料減免で約三百六十億円の財源が必要。保険料徴収システムなどの改修費と合わせ、政府・与党は今年度に補正予算を編成して対応する方針です。
七十―七十四歳の窓口負担の引き上げや、七十五歳以上のすべての人が保険料を負担する後期高齢者医療制度は、○六年医療改悪法で政府・与党が決定していたものです。実施を目前に「修正」を行わざるをえない異例の事態となりました。
後期高齢者医療制度は、サラリーマンの子どもに扶養されるなどしていた約二百万人に新たな保険料負担を強いることになっていました。もともと当初二年間は保険料を半額にする負担軽減措置が設けられていました。今回の与党合意で、同月から半年間は負担ゼロ、その後半年間は一割、○九年四月から一年間は半額負担となりますが、制度そのものには手をつけていません。
保険料の凍結期間については、自民党が六カ月、公明党が九カ月を主張して調整が続いていました。
与党はまた、○九年度以降の高齢者の医療保険制度の在り方について、今後も議論を継続することでも合意しました。
解説
圧倒的多数は負担増
自民、公明の与党が、来年四月実施を目前にした高齢者医療費負担の「一部凍結」に追い込まれました。参院選での与党大敗北という国民世論の怒りが、政治を動かすことを示したものです。
しかし、今回の与党の合意は、四月実施の医療制度改悪・負担増の対象の一部に過ぎません。七十五歳以上の後期高齢者制度によって、保険料が天引きされるなどの対象は千三百万人の規模にのぼります。これにたいし、保険料の「凍結」対象は二百万人です。圧倒的多数に保険料負担がのしかかります。
与党の合意には、今回の「凍結」は、「本制度(後期高齢者医療制度)を円滑に施行するため」の「激変緩和措置」と明記しています。制度改悪を確実に実行するため、世論の反発を和らげるという意図は明白です。
昨年の国会で、「高齢者に応分の負担を」といって医療改悪を強行したことへの反省もなく、世論を恐れたための与党の「凍結」には、マスメディアからも「露骨な選挙対策」という批判が上がっています。制度の欠陥が明らかになった以上、一部の「凍結」や「実施の延期」でごまかすのでなく、後期高齢者医療制度そのものの中止・撤回しかありません。(宮沢毅)
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