2007年10月30日(火)「しんぶん赤旗」
アルゼンチン新大統領
反軍政運動・弁護士出身
民生重視 国民が支持
二十八日のアルゼンチン大統領選挙でのクリスティナ・フェルナンデス氏の圧勝は、新自由主義政策からの脱却を掲げ、経済や社会分野における国家の役割を重視するキルチネル現政権の路線と実績が国民の大きな支持を受けていることを改めて示しました。貧困層および下・中位の中流層の支持が同氏に集中したといわれ、中南米に広がる新自由主義反対の潮流の強さを示しました。(メキシコ=松島良尚)
現政権の実績押し出す
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フェルナンデス氏は学生時代に反軍政運動に加わり、その後弁護士に。サンタクスル州議員を経て一九九五年に首都ブエノスアイレス選出の上院議員に初当選。与党・正義党の左派に所属し、同党のメネム元大統領が推進した九〇年代の新自由主義政策に一貫して批判的だったため、与党会派内で疎まれていたといわれます。
メネム元大統領は国際通貨基金(IMF)の新自由主義路線を積極的に受け入れ、市場開放、規制緩和、民営化などを推進しました。IMFは同国を「優等生」と評しましたが、通貨の過大評価が輸出競争力を弱めたこともあって、国内産業は大きく衰退。労働者の権利も弱まる一方でした。
結局、二〇〇一年末に対外債務の支払い停止に追い込まれ、貧困、失業が一気に広がりました。
〇三年五月に発足したキルチネル政権は、こうした政策の転換とIMF路線からの決別を掲げ、債務見直し交渉で債務を七割以上削減することに成功。通貨ペソ安のもとで輸出が好調に推移し、毎年8%以上の経済成長を実現させました。IMF債務を完済し、社会支出を抑制するIMFの構造調整政策に縛られない路線を敷きました。
社会分野では、公的年金制度を強化し、無年金者を救済する制度を確立。最低賃金は九三年以来据え置かれていましたが、この四年間で五倍近くに引き上げられ、十二月からは月九百八十ペソ(約三万八千円)となって貧困ライン収入を上回ります。貧困人口は半分以下、失業率は三分の一近くになり、この十三年間で初めて一ケタ台になりました。
フェルナンデス氏は、こうしたキルチネル政権の実績を押し出し、IMF路線に反対する路線を継承する形で選挙をたたかいました。野党候補らは経済成長重視策によるインフレに批判を集中しましたが、フェルナンデス氏はその懸念はないとし、各業界との合意に基づく「価格調整プログラム」を続ける姿勢です。
今回の選挙では、与党・正義党と最大野党・急進党の伝統的二大政党とも内部分裂し、三人の主要候補とも両党内のそれぞれの支持勢力に推されました。こうした状況から、今後の政党再編を指摘する声もあがっています。
アルゼンチン 面積は二百七十八万平方キロ(日本の七・五倍)、人口は三千九百十万人。一八一六年にスペインから独立、一八六二年にアルゼンチン共和国に。欧州系が国民の97%を占め、九割がカトリック教徒。主要産業は農牧業。