2007年10月27日(土)「しんぶん赤旗」
お産が危ない
妊婦救急搬送の拒否5849件 04〜06年
産科医不足 深刻
初の全国調査
救急車などが妊婦を搬送中、医療機関に一回以上受け入れを拒否された件数が、二〇〇四年から〇六年までの三年間で五千八百四十九件に上ることが二十六日、総務省消防庁と厚生労働省が行った初の全国調査で明らかになりました。うち二回以上の受け入れ拒否件数は二千四百五十二件と四割以上を占めています。医療体制の不備で多くの妊婦の受け入れ先が見つからない実態が浮き彫りになりました。
調査は、奈良県在住の妊婦が今年八月、受け入れ病院が決まらず、救急搬送中に死産した問題を受け、全国の消防本部を対象に実施されました。
それによると、〇六年に一回以上受け入れを拒否されたケースは、東京都が五百二十八件と最も多く、次いで神奈川県(四百八十四件)、大阪府(二百八十二件)と、大都市で多くなっています。奈良県は、搬送件数は五百五十二件で全国十八位ですが、受け入れ拒否は百二十五件で全国八番目と高いことも分かりました。
受け入れ拒否の理由(〇六年)では、手術スタッフがそろわなかったり処置のための設備などがなかったりする「処置困難」が26・6%で最多。「手術・患者対応中」(17・2%)、「専門外」(11・7%)などと続いています。
一度も健診を受けたことがない妊婦が「かかりつけ医がいない」という理由で拒否されたケースは百四十八件で全体の3%でした。
受け入れ先が決まるまで救急車などが現場に滞在していた時間は、三十分以上かかったケースが三年間で二千五百四十四件。奈良県のケースのように、受け入れ先が決まるまで一時間半以上かかった事例も四十六件ありました。最長は〇六年の東京都のケースで、二十六回断られ、病院に入るまで三時間半かかっていました。
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対策待ったなし
「受け入れたくても、設備やスタッフがなく手が回らない」―消防庁と厚労省が初めてまとめた「妊婦搬送調査」は、日本の産科救急の現場が“薄氷”の上にある実態を改めて示しました。
産婦人科医は年々減少し、二〇〇四年には一万五百九十四人で、十年前より八百人近くも減っています。産婦人科のある病院は一九九六年から二〇〇五年の間に28・7%も減りました。そのため、残された産科に患者が集中。激務のために産科を辞める医師や産科を閉じる病院が続出する悪循環が続いています。
背景には、社会保障切り捨て路線を進め、医療費抑制のために大学医学部定員を減らすなど医師養成を抑え続けてきた政府・与党の姿勢があります。
日本共産党は今年二月、「産科医不足はもはや一刻も放置できない」と、▽公的病院の産科切り捨てをやめ、なくした病院は早期に復活▽民間病院の産科休廃止を止めるため、診療報酬を緊急に引き上げ▽周産期医療の拠点づくりを国の負担と責任で推進―などを提案してきました(医師不足解決のための提案)。
安心して子どもを産める社会へ―対策は待ったなしです。(坂井 希)
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