2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」
「二大政党づくり」の新しい特徴と、日本共産党の立場
総選挙勝利にむけ、いまこそ打って出よう
長崎の交流会 志位委員長の発言(大要)
日本共産党の志位和夫委員長は二十一日、長崎市で開かれた「志位さんと語り合う日本の前途」に出席後、「五中総実践交流会」に参加し、発言しました。情勢にかかわる部分の大要を紹介します。
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第五回中央委員会総会では、参院選の総括をふまえ、「二大政党づくり」の動き、「自民か、民主か」を押し付ける動きのなかで、日本共産党をどう伸ばすかという方針を打ち出しました。
この方針は、いま全国で積極的に討議され、実践が開始されていますが、五中総後の情勢をみますと、五中総決定が明らかにしたわが党の値打ち、役割がいっそう際立つ、新しい情勢の劇的な展開があります。そこをよくつかんで、元気いっぱい、国民のなかに打って出て、総選挙勝利を目指す活動を一気に飛躍させることが大切です。
安倍「靖国」派内閣の崩壊――情勢の前向きの変化に確信を
この間の情勢の大きな変化は、何といっても安倍「靖国」派内閣が崩壊したことです。
五中総決定では「安倍・自公政権は、政治的衰退が極まった末期的姿」をさらけ出していると指摘しましたが、それはまもなく安倍首相の政権投げ出しという形で裏づけられることになりました。
安倍政権がああいう無残な形で崩壊したことは、「靖国」派にとっては大打撃となりました。「靖国」派の「論客」でならした人たちのなかから、「これから先十年は、冬の時代だ」とか、「反動の時代がはじまった」(笑い)などといった嘆き節が聞こえてくるほど、深刻な打撃となりました。
こうした新しい情勢をつくるうえで、日本共産党の果たした役割は、重要なものがありました。わが党は、靖国問題の本質の解明をはじめ、小泉・安倍政権で、さまざまな形であらわれた歴史問題の逆流にたいするたたかいを、道理をつくしておこないました。
安倍内閣が登場し、「戦後レジームからの脱却」、「美しい国づくり」などと言い出したときに、その狙いは、戦後、日本国憲法で規定された平和的・民主的な体制を否定して、戦前・戦中の軍国主義に逆戻りさせようとするものだと、その本質をきびしく明らかにしてきたのは、日本共産党でした。それが国民の声と響きあって、安倍「靖国」派内閣の崩壊へとつながった。真実と正義にたった声が政治を動かしたのです。
安倍「靖国」派内閣の崩壊とともに、侵略戦争を美化する潮流は、大きく後退を余儀なくされました。さらに、憲法を変えようという動きに対しても、甘く見てはいけないけれども、ブレーキがかかったことは間違いありません。
そういう情勢の前向きの変化をつくってきたことに、ぜひ確信をもって、沖縄戦についての歴史教科書改ざん問題、「従軍慰安婦」問題など、安倍首相時代の“負の遺産”を一掃し、歴史問題での逆流をたつまで奮闘したい。さらに憲法問題では、もちろん改憲派はあきらめたわけでなく、態勢をたてなおしてきますから、こういう時期にさらに世論と運動を広げて、九条擁護の国民的多数派をつくっていくことが大切です。
福田新政権――日本共産党は堂々と正面から対決する
安倍前首相が政権を投げ出した後、福田新政権がつくられました。ここで重要なのは、この政権交代によって、「二大政党づくり」の動きに、新しい様相、特徴が生まれているということです。
日本共産党は、相手がだれであろうと、堂々とたちむかう足場をもっています。昨日放映された朝日ニュースターの番組で、私は、自民党の元幹事長の加藤紘一さんと対論する機会がありました。加藤さんは、開口一番、「志位さん、福田さんになって、共産党はやりづらくなったでしょう」と聞いてきました。私は、「そんなことはないですよ。福田さんが『若者に希望、お年寄りに安心』などというので、国会の代表質問で、それならばといくつか聞いてみたけれど、弱肉強食の『構造改革』路線の基本、アメリカいいなりの基本のところでは、かわりばえのしない答弁が返ってきました」といって、日本共産党は新政権と正面からたたかうという立場をのべました。
日本共産党は、首相がだれに代わろうと、「自民党政治の三つの異常」をただす民主的改革をすすめるという大きな立場にたって、政治の転換をもとめていくことに変わりはありません。福田内閣が、国民の声に押されて、「構造改革」路線を、多少とも手直しせざるをえない状況もあちこちで生まれていますが、そういう問題ではさらに相手を追い詰めて、国民要求を実際に実現するためにおおいに攻めてたたかいます。
さらに、安倍政権から福田政権に交代して、たとえば、北朝鮮の問題、アジア外交の問題などでは、前向きの変化が生まれてくる可能性がありますし、すでにその兆候がみられますが、わが党は、これらの問題では党利党略ではなく、変化を促すという態度でのぞみます。「靖国」派政治からの脱却・転換の動きは、だれがやることであれ結構なことです。
いま国民の声で政治が動く、新しい局面が生まれています。その状況を攻勢的にとらえて、現実政治を動かすとともに、自民党政治に代わる新しい政治とは何かを太く明らかにして、おおいに奮闘したいと思います。
新テロ特措法をめぐって――どんな形でも海外派兵は憲法違反
それでは民主党はどうか。これまでの安倍政権に対して民主党は、「反安倍・自公政権」を前面に掲げた「対決戦術」をとってきました。安倍政権が相手ですと、「対決戦術」というものも、わりあいうまくやれたのです。というのは、安倍前首相というのは、自民党のなかでも考えうるかぎり「右」の人ですから(笑い)。安倍さんのような「ウルトラ右翼」の首相と比べたら、小沢・民主党も「左」の方に見えてきます(笑い)。ですから、わりあいに「対決戦術」がやりやすかったのです。
ところが、今度は、安倍さんのような「ウルトラ右翼」とは違う、いわば「普通の自民党」の首相が出てきたわけです。「普通の自民党」となると、小沢さんも、もとは自民党の幹事長だった人ですから、「自民か、民主か」といっても、違いがあまりよく見えてこなくなってしまった。
それでも小沢・民主党は、「対決戦術」を続けようとしています。しかし、無理に違いを出そうとすると、とんでもない問題が起こってきます。たとえば、新テロ特措法の問題をめぐっても、アフガニスタンに展開しているISAF(国際治安支援部隊)という地上部隊に自衛隊を出すということを、小沢さんが言い出しました。ISAFというのは、国連安保理決議にもとづいてつくられた部隊ですが、NATO軍が指揮し、現実にやっているのは米軍と一体になった戦争です。これに参加することは、もちろん憲法違反です。
こういうことを小沢・民主党が言い出しますと、海上自衛隊を出すのは与党だが、陸上自衛隊を出すのは民主党だと(笑い)、海と陸とで競争をやっているという話になってしまいます。テレビ朝日で「報道ステーション」という番組がありますが、キャスターが、「どっちがタカ派なのかよく分からなくなってしまいましたね」というコメントをしていましたが、憲法違反の海外派兵をすすめるという点では、自民と民主で、あまり立場に違いのないことが、こうした形で明らかになってしまいました。
先日、(千葉県)船橋市の党支部が開いた「明日の日本を考えるつどい」に参加して、話をする機会がありましたが、参加者の一人から、「これまで民主党に期待していたけれど、これからは共産党を支持します」という発言がありました。「どうしてですか」と聞いたら、「民主党は自民党と同じになってしまった。両方とも自衛隊を海外に出すと言っている。民主党に幻滅しました」ということでした。国民のみなさんは、実によく政治の動きをみているなと感じたしだいです。憲法をまもりぬく日本共産党の立場が、いま鮮やかにうきぼりになっています。
もちろん政府の新テロ特措法案に反対するという一点では、わが党は民主党とも協力します。しかし率直に批判もします。どんな形でも自衛隊の海外派兵は間違いだということ、憲法違反だということを、きちんと指摘していきます。
社会保障を支える財源論――今後の経済論戦の最大の焦点に
それから、政府・与党のなかから、いよいよ消費税増税は避けられないという動きが台頭してきました。経済財政諮問会議の「民間議員」と呼ばれる四人のグループが、財界の意向をむき出しの形でしめして、「社会保障を削らなければ、大幅の消費税増税は避けられない」という「試算」なるものを出してきました。この「試算」は、歳出抑制の対象となるのは社会保障費だけ、増税の対象となるのは消費税だけという、国民を脅しつけて増税に誘導しようというひどい代物ですが、いろいろな形で消費税増税の合唱がはじまっていることは、きわめて重大です。
政府・与党は、「構造改革」路線の基本は変えていないけれども、福田内閣になって、一部の負担増の「凍結」を言い出すなど、いろいろな取り繕(つくろ)いをはじめています。そして、わが党が、国会の代表質問で、小泉内閣の二〇〇一年の「骨太の方針」以来つづけている政策――社会保障費の自然増を毎年二二〇〇億円も削る政策はやめなさいと要求すると、舛添厚生労働大臣などは「二二〇〇億円のシーリングは限界に来ている」といいだしました。政策の破綻(はたん)を認めました。しかし、そういうはなから「消費税(増税)ということも一つの選択肢として考える」べきだというのです。弱肉強食の「構造改革」路線にブレーキをかけるようなことをいいながら、「それなら消費税増税を」というのが政府・与党です。
このときに、日本共産党は、太い筋で、相手の増税論に、たちむかう足場があります。私たちは、いま、「二つの聖域」――ゆきすぎた大企業・大資産家減税にメスを入れよ、軍事費にメスを入れよ、そうすれば消費税に頼らなくても暮らしを支える財源はつくれるということを具体的にしめして、「消費税増税やむなし」論を正面から打ち破る論陣をはっています。これは、大企業中心主義をただす、さらに軍拡政治をただすという綱領の立場にたった、日本共産党ならではの論陣です。
ところが、民主党は、この財源論で大きな弱点があります。民主党は「ムダ遣いを削る」とは言います。もちろん、ムダ遣いをなくすことが必要であることは論をまちません。しかし、社会保障を支える安定的な財源ということを考えたら、大企業・大資産家減税をただす、軍事費を削るなど、政治の根本的な転換の立場にたたないと、展望が出てきません。これを言えるかどうかということが試金石になってくる。言えないと結局は、消費税増税という袋小路に追い込まれていくことになります。民主党は、「二つの聖域」にメスをとはいえません。そして消費税については、もともとは増税派であり、当面は上げないとしているだけです。これが大きな弱点になってきます。民主党も財源論をしめしてはいますが、それが妥当なものか、現実的なものかは、今後きびしく問われてくるでしょう。
社会保障を支える財源をどうするか。「財源といえば消費税」という議論に、正面から立ち向かえるかどうかが、総選挙にむけて、経済論戦の最大の焦点になってくると思います。日本共産党は、確固とした対決の立場をもっています。ところが民主党は、「対決戦術」といってもさだかな足場がないのです。
まさにいま打って出るべきチャンス――総選挙勝利めざして奮闘を
このように、安倍政権から福田内閣に代わって、「二大政党づくり」の動きにも、新しい特徴が生まれている。福田内閣は、自民党政治の基本のところは変わらないけれども、安倍内閣のような「靖国」派政治の色合いは抑えていく、国民の声におされていろいろな取り繕いもやるというやり方で、延命をはかろうとしています。それに対して民主党は「対決路線」を続けようとしていますけれども、いろいろとほころびや矛盾が生まれています。日本共産党は、相手がだれであれ、綱領と日本改革の方針にたって、正面から対決し、根本的な転換を堂々と主張できる。ここがいまの情勢の面白いところなのです。
「二大政党づくり」の動きを押し返して、日本共産党の前進をつくるうえでも、まさにいま打って出るべきチャンスなのだということをしっかりつかんで、五中総決定の実践にとりくもうではありませんか。
「総選挙はいつか」ということをよく聞かれます。「私が決めるのではありません」と言っていますが(笑い)、だいたい来年の春ぐらいまでには選挙がある可能性が高いと考えて、逆算でやるべきことをやりぬく緊張感と戦闘性をもったとりくみが必要です。参院選の教訓を生かして、今度こそ私たちは前進・勝利をかちとりたい。九州・沖縄ブロックからも前進の流れを必ずつくりだしていただきたい。そのことを訴えて発言とします。(拍手)