2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」
学力テスト
市町村別・学校別の成績
全都道府県が非公表
「序列化・過度の競争 懸念」
二十四日公表された全国学力テストの結果について、四十七都道府県すべての教育委員会が、同省から提供される市町村別、学校別の成績を「公表しない」ことが本紙の調べでわかりました。
公表しないと判断した主な理由について、県教委に対して市町村別・学校別の公表をしないように求めた文部科学省の実施要領を根拠にして、「学校の序列化と過度の競争をあおる懸念があるため」(京都府)とした回答が多くありました。
市町村や各学校に対し結果の取り扱いをどう指導するかについては、「(各市町村教委に対し)説明会を実施し、個々の学校名を明らかにした公表はしないなどの留意事項を確認した」(佐賀県)、「生徒に返すときは個人面談や学級指導を通して説明し、支援に役立つようにするよう文書を出した」(島根県)など、序列化や競争につながらないよう配慮を促す教委がありました。
一方で、「市町村の判断に委ねる」とした教委もあり、各都道府県で温度差がありました。
成績によって学校への予算配分に格差をつけるかについては、ほとんどの教委が「しない」としています。
結果をどう活用するかについて、九州のある県は「数字に示された結果を単純に比較するのではなく、調査結果をしっかり解釈し、学習環境などさまざまな状況との相関関係において特徴や課題について把握していく」としています。
また、「全国と比べるということではなく、課題を授業や勉強の改善に生かし、進めていくようにしていく。例えば、できなかった子どもたちに視点をあてるなど」とする県がある一方、「学力、学習状況を全国と比較し、県の学力向上の参考にする」と回答したところもありました。
政府に対する要望には、「調査が教委や学校の改善に結びついているのかどうか、よく検証しながら進めてほしい」「傾向をつかむのであれば、対象学年の全員ではなく抽出でもよいのではないか」とする声が寄せられました。
また、記名式に対する個人情報の漏えいの心配や、結果公表まで半年かかったことに対し、「一人ひとりの子どもの改善につながらないことになるので、今後、改善してほしい」など、政府の不手際を指摘する意見も複数ありました。
活用力など課題浮き彫り
全国学力テストの結果は、子どもの読解力や知識を実生活に活用する力が足りない現状を改めて示しました。
端的な例は小学校算数。基礎のA問題で、底辺が四センチ、高さ六センチの平行四辺形を図示して面積を求めさせたところ、96・0%の児童が二十四平方センチと正答しました。
ところが、活用のB問題で、地図に示された平行四辺形と正方形の公園の広さを比べる設問では、正答率が18・2%と激減。平行四辺形の底辺と高さ以外に斜辺の長さも示されたため、底辺×斜辺で求めた児童が誤答の四割以上を占めました。
小学校国語Bでは、同じ本を読んで書かれた二つの感想文に共通する特徴を聞く設問で、正答率が五割強。古紙の再利用が必要な理由、回収の際の注意点をそれぞれ二つずつ例文から抜き出す問題でも五割を切りました。
中学の数学Bでは、熱した水の温度と経過時間の一次関数グラフから水温(y)と時間(x)の関係式を作り、何分後に八〇度になるかを文章で説明させた問題の正答率が四割。無答率もほぼ四割に達しました。
読み書き・計算力アップ
全国学力テストの基礎的知識や計算力を問うA問題では、「勧める↓すすめる」「やく↓焼く」など漢字の読み書きと基礎的な計算の力は過去の同一問題に比べ向上がみられました。半面、確率の意味や円すいの体積などが正しく理解されていないことも分かりました。
二〇〇二年や〇四年に実施された抽出方式の「教育課程実施状況調査」などで出題されたことのある問題(小学校十三問、中学校十二問)で比べると、二十四問は正答率が上がりました。
算数・数学で正答率が上がったのは「半径十センチの円の面積を求める式と答え」(○四年、小5の61%から今回73%)「xとyを用いた連立方程式の解」(○二年、中2の68%から今回72%)など。
一方、中学校の数学では、さいころを振った時の目の出方を問う確率の問題で正答率が50%に達しませんでした。
また、円柱の容器いっぱいの水を、底面積と高さが等しい円すいの容器に移した時の正しい図を選ばせたところ、円すい二つ分とした誤答が36%に上り、正解である「三つ分」の38%とほぼ並びました。
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