2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」

世界大戦下のレジスタンス

ギー・モケの手紙 高校で朗読

強制には「政治利用」と反発も

フランス


写真

(写真)地下鉄「ギー・モケ」駅のホームの展示スペースや献花を見る人たち。ポスターは遺書の一節=22日、パリ(山田芳進撮影)

 【パリ=山田芳進】フランス全土の高校で二十二日、「ギー・モケの手紙」の朗読が行われました。第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のフランスでレジスタンス(対ナチス抵抗運動)に加わり、一九四一年十月二十二日に十七歳でナチスによって銃殺されたフランス共産党員ギー・モケが家族にあてた遺書に感銘を受けたサルコジ大統領による発案でした。これにたいし、教育現場や政界からは「歴史の政治利用」などの反発の声が上がりました。

 サルコジ大統領は就任後の五月、レジスタンス闘士の記念碑を訪れた際にギー・モケの最後の手紙の朗読を義務化することを示唆したことから、毎年この日に遺書が朗読されることになりました。

 フィヨン首相が首相府にパリ市内の生徒を招いたのをはじめ、閣僚が各地の学校で朗読に参加しましたが、学校内外で抗議の声に直面しました。

 教員組合は教師に対し、「歴史の統制」や、死に関する手紙の内容が生徒に与える影響などを理由に、朗読に参加しないように呼びかけました。

 野党のなかでは、社会党が「大統領の個人的で一方的な決定が無意味な論争と分断を生みだした」と批判。モケが射殺された仏西部のシャトーブリアンで二十二日に五千人の記念集会を開催した共産党のビュフェ全国書記は「来年はこの日が、なぜモケらが抵抗したか、生徒たちが理解できるように、市民参加型のフォーラムという形になるようにしていきたい」と語りました。

 パリ市内の地下鉄のギー・モケ駅の構内には、ギー・モケに関する資料を展示するスペースが設置されています。この日は、フランス共産党や仏労働総同盟(CGT)、政府の代表などが訪れて献花しました。

 息子と展示を見ていたオリビエさん(50)は「この駅を通るたびに立ち止まって、涙しています。フランス人として彼のことは誇りに思います」と語りつつ、今回の朗読義務化について次のように語ります。

 「手紙の朗読を強制するのはよくありません。強制は反発を招きます。また、彼のことだけを取り上げるのもよくありません。何の罪もなく散った命はほかにもあります。サルコジ大統領の人気取りのための一つの手法でしょう」


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