2007年10月24日(水)「しんぶん赤旗」

主張

大増税「試算」

国を滅ぼす数字合わせ


 御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)らが、経済財政諮問会議に提出した大増税「試算」が波紋を広げています。

 「試算」は小泉内閣の二〇〇六年版「骨太方針」を土台に、予算削減の規模と経済成長の高低に応じた「増税必要額」を明記しました。

 一一年度までに国と地方の予算を十四・三兆円減らすと同時に成長率が高めなら増税不要、予算削減が十兆円ほどで成長率が低めなら六・六兆円の増税が必要だとしています。

すでに破たんした路線

 「試算」が選択肢に挙げたいずれのケースでも、国の社会保障予算を一一年度まで毎年二千二百億円も削るなど、容赦のない福祉切り捨てを“不動”の大前提にしています。

 小泉内閣以後、高齢化による社会保障予算の自然増のカットは一・四兆円に達しています。社会保障のあらゆる分野に負担増と給付減が及び、福祉の支えを必要とする人びとを見殺しにする深刻な実態が表面化してきました。

 舛添要一厚労相は経済財政諮問会議で、「歳出抑制にはほぼ限界がきている」と発言しています。柳沢伯夫前厚労相も参院選後、これ以上の国民負担増は「もうあり得ない」と言っていました。新旧大臣の発言は、「試算」の土台である〇六年版「骨太方針」が、初年度から破たんしていることを示しています。

 諮問会議で財界メンバーらは福田内閣が検討している「高齢者医療費負担増の凍結」を、「できる限り短く」するよう求めました。社会保障予算の削減路線から転換しない限り、福田首相が掲げる「お年寄りが安心できる国」はつくれません。

 「試算」は中長期の数字も挙げ、二五年度には最大で三十一兆円もの増税が必要になるとしています。

 日本共産党の小池晃政策委員長が二十一日のテレビ番組で指摘したように、「試算」は二五年度まで軍事費も公共事業費も名目成長率に従って増える前提に立っています。社会保障以外の予算は一切見直さない、増えた分はすべて庶民増税でという生活に冷たい一方的な「試算」です。

 大きな数字を持ち出して国民を脅し、福祉削減と増税で一番痛めつけられる国民を、消費税増税しかないというところへ追い込む悪質極まりないやり方です。

 財源といえば消費税しかないかのような議論は、消費税増税で法人税を引き下げよと要求している財界の都合のいい方向への世論誘導にほかなりません。

 甘利明経産相が諮問会議に提出した資料によると、日本の労働者の社会保険料負担はスウェーデンの一・五倍など高さが際立つ一方で、日本企業の法人税と社会保険料負担はスウェーデン、フランスの五、六割にすぎません。財界・大企業には負担の余力が十分にあります。

自民政治の聖域にメス

 「試算」に表れているように経済を悪化させれば財政も悪化します。社会保障の削減と消費税増税は日本経済の最大の弱点である家計を痛めつけ、消費を冷やす最悪の選択であり、国を滅ぼす数字合わせです。

 経済を悪化させずに財政を立て直すには歳出では無駄と浪費を改め、歳入では余力のある部門に相応の負担をしてもらうほかありません。

 そのためにも海外派兵の予算、グアムを含む米軍再編に三兆円投入など膨大な軍事費の無駄を削り、大もうけと行き過ぎた減税でたっぷり余力のある大企業・大資産家に応分の負担を求めるなど、自民政治の聖域にメスを入れることが不可欠です。


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