2007年10月23日(火)「しんぶん赤旗」

主張

防衛前次官疑惑

軍需めぐる癒着にメス入れよ


 八月末まで防衛省の次官をつとめた守屋武昌氏が、軍事・航空関係の専門商社の「山田洋行」の元専務とゴルフや会食を通じて親密な交際を続けていた疑惑が、大きな問題になっています。ことは前次官の行動が自衛隊の倫理規程に違反するかどうかだけでなく、防衛省・自衛隊幹部と軍需産業との、根の深い癒着の存在を浮かび上がらせています。

 「防衛」関係費として毎年巨額の税金をつかい、新型兵器の購入を続けてきた防衛省と軍需産業の癒着は、「防衛」政策そのものをゆがめるものとして絶対に容認できません。癒着の根本にメスを入れるべきです。

疑惑は「氷山の一角」

 守屋氏は防衛官僚の生え抜きで、中央官庁としては異例な四年以上の長期にわたって官僚トップの次官に君臨、“天皇”とまで呼ばれました。次官を辞めるさい、退任を迫った当時の小池百合子防衛相と対立、首相官邸に働きかけたことなどは、まだ記憶に新しいところです。

 一方、「山田洋行」は軍事・航空関係の専門商社で、防衛省のA級入札業者とされ、元専務は一九六九年の同社発足以来、軍需部門を一手に握ってきました。昨年オーナーと対立、部下を引き連れて新会社を設立しましたが、その際航空自衛隊に新型輸送機(CX)のエンジンを納入する米メーカーとの代理店契約を奪い、防衛省との関係を続けています。

 明らかになった前次官と元専務の関係は、百回を超すゴルフやマージャンでの接待、ひんぱんな会食、家族への便宜提供など、それ自体公務員の行動としてあってはならないものです。自衛隊の倫理規程などに照らして、前次官がきびしくその責任が問われるのは当然です。

 重大なのは、前次官がそうした接待と引き換えに、元専務に自衛隊への兵器納入などで利益を提供したのではないかとの疑惑です。一部の報道によれば、元専務が新会社を設立したあとも、前次官は何の実績もない新会社への発注を防衛省に強く働きかけたといわれます。これが事実とすれば、明らかな贈収賄の事件としても、前次官と元専務との関係は断罪されなければなりません。

 しかも元専務の防衛庁・自衛隊幹部への働きかけは、文字通り、防衛省・自衛隊ぐるみで広く行われていたとも指摘されています。防衛行政に影響力のある政治家にも政治献金などがおこなわれていました。前次官と元専務の癒着は文字通り「氷山の一角」であり、軍需産業をめぐる政官財の癒着事件として徹底的にメスが入れられなければなりません。

 防衛省・自衛隊の発注をめぐっては、かつてのダグラス・グラマン事件をはじめ、つい数年前の装備品発注疑惑や防衛施設庁の官製談合事件など、繰り返し問題になってきました。その背景には「防衛」予算が聖域とされ、軍需産業への発注実態などが「防衛上の秘密」を建前に十分公表されてこなかったことがあります。この機会に政官財の癒着構造そのものにメスを入れ、根本からただしていくことが不可欠です。

証人喚問は当然

 守屋氏の次官在任中、自衛隊はアフガニスタンやイラクでアメリカの戦争を支援し、沖縄での新基地建設など、米軍再編でも守屋氏は陣頭指揮しました。テロ特措法に絡んで問題になっている、給油実績のねつ造なども守屋氏の任期中です。

 新テロ特措法の審議にあたって、証人喚問などあらゆる手段で守屋氏にかかわる疑惑を解明し尽くすことも、国会としての重大な責任です。


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