2007年10月22日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
老後を人間らしく生きたい
住民、党が力合わせ
介護難民出さない
介護保険法が改定されてから一年半がすぎましたが、高齢者にとって「介護とりあげ」や負担増となり、必要な公的介護が受けにくくなっています。人間らしい生活のできる制度改善に向け、努力している東京都小金井市と大分県の取り組みを紹介します。
助成制度拡充 利用者69倍に
東京・小金井
|
「介護予防への移行によって、亡くなった方がでたといってもいい過ぎではありません」と言葉が返ってくる介護現場―。東京都の日本共産党小金井市議団は、現場の声を胸に九月定例会で介護保険料の引き下げ条例改正案の議員提案と、介護サービスの支援拡充を求め奮闘しました。
基金4億円も
介護保険料の引き下げ条例を提案する契機となったのは、今年九月定例会に提案された決算でした。計画よりもサービス量が大幅に少なくなり、介護予防事業全体で事業費を約五億円見込んでいたのが、一億円余りしか使いませんでした。その結果、一億七千万円の繰越金、支出する予定の四千五百万円の基金の取り崩しはゼロでした。基金残高は四億円もあります。
二〇〇六年度から始まった小泉元内閣の改定介護保険制度の「目玉」であった介護予防事業は国のあてが外れたのです。〇六年度は、利用者一人年平均四千八百円、総額一億三千万円の保険料の引き上げで、高齢者の負担が重くなっていただけに、厳しい批判の声が寄せられました。
なぜ黒字になったのか―党市議団は事業所や現場にでかけ調査しました。サービスが受けづらくなっている実態を議会で明らかにし、利用者への援助と見込み違いの事業計画にもとづく保険料の軽減条例を提案しました。条例案は自民、公明、民主の三党は反対討論に立たず否決しました。
署名運動始まる
市議会での日本共産党の活動を知った市民は今、介護保険料の引き下げと国保税の増税をしないことを求める署名運動を始めています。
日本共産党市議団は、市民団体の要望とあわせ、〇五年、〇六年の二回、介護度3以上の利用者に毎月五千円の介護手当てを支給する「重度要介護高齢者手当条例」を議員提案しました。
残念ながら否決されましたが、小金井市は今年九月から訪問介護利用者助成制度を拡充しました。
対象者は要介護、要支援認定を受け、世帯で住民税非課税の利用者、助成内容は4%を小金井市が助成する内容です。
これまで年六十六人(延べ)の対象で約七十万円の支出でしたが、年四千五百三十六人(延べ)、九百七十三万四千二百五十六円に増やすことができました。
改定介護保険制度の下で、党市議団は市民と一体となって、サービスの充実と負担の軽減を求めていきます。(森戸洋子・小金井市議)
保険料減免に笑顔 市が独自に
大分の4市
大分県宇佐市で介護保険料減免の申請が十月から始まりました。減免が決まると、今年四月までさかのぼって収入が少なく困窮している第三段階(世帯全員が住民税非課税、所得額と課税年金収入の合計が八十万円を超える)の人の保険料四万二千八百四十円(年)が第二段階(第三段階の基準のうち八十万円以下となる)の二万八千五百六十円に減額されます=保険料は六段階に設定=。さっそく、市報で減免制度を知った市民から窓口に電話で問い合わせがきています。
県内で市町村が独自に介護保険料減免を実施しているのは、大分市、別府市、日田市に続き四市目です。
会つくり署名
自治体独自の減免制度を実施する四市では、住民が「介護保険をよくする会」などをつくり、減免制度などを求める署名活動や集会を活発に繰り広げてきました。
県内で最初に独自の減免制度をつくった大分市では、介護保険制度が導入された二〇〇〇年四月、「介護保険をよくする大分の会」を発足させました。その年には三千を超える署名を市議会に提出し、同年十二月市議会では、日本共産党市議団が保険料減免条例案を提案しました。これらの声に市は〇一年に独自の減免制度を実現しました。
「大分の会」は、その後も対市交渉や署名を重ね、〇四年、市は減免の対象を広げ、減免額も第一段階の半額まで減額するなど減免制度を拡充しました。減免された人は前年度の二倍になりました。
保険料の減免は、低い年金額で生活する高齢者にとってなくてはならない制度となっています。
月四万五千円の年金で一人暮らしをしている由布桂子さん(73)=大分市=は、「減免なしには生活ができない」と話します。
由布さんは、年額二万五千六百二十円の保険料が二分の一の一万二千八百十円に減額されました。一日の食費は五百円。現在、パートの仕事を探しています。「七十を過ぎて働くとは思ってもみなかった。若いときに一生懸命働いてきて、老後は寂しい思いをして不安を抱えて生活している。こんなひどいめにあうとは…」と話します。
厳しい低所得者
独自の減免を実施している四市は、いずれも減免のための一般会計からの繰り入れをしていません。「国からの指導がある」と市の担当者はいいます。厚生労働省が減免制度について、(1)保険料の全額免除(2)資産審査なしの減免(3)保険料減免分にたいする一般財源の投入―の三点を不適切とする「三原則」の徹底を自治体に求めているからです。この「指導」は法的義務のないものです。
一般財源の投入がなければ、減免を拡充すればするほど保険料にはね返る仕組みです。
「大分の会」の徳丸絹代会事務局長は、「現在の制度は低所得者に厳しい。国に対しても所得に見合った保険料になるよう強く求めたい」と話していました。(大分県・大星史路)