2007年10月20日(土)「しんぶん赤旗」
「政治とカネ」
根本に収入構造の問題
企業献金・政党助成金の廃止を
政治資金の取り扱いを定めた政治資金規正法の改定論議が本格化しています。自民、公明両党は、国会議員が代表を務める政治団体の一円以上の全支出(人件費を除く)に領収書添付を義務づけ、公開することで合意。民主党も、すべての政治団体の支出を対象に同様の措置をとる改定案を来週にも与野党に提示します。支出を透明にするのは当然ですが、「政治とカネ」の腐った関係を断ち切るには、収入を企業・団体献金と政党助成金に頼っているという根本にメスを入れる必要があります。
行政ゆがめる
制度のあり方を論じるうえで欠かせないのは、疑惑の徹底糾明です。疑惑はどんなカネをもとに生まれたのか、そこに利権構造はなかったのか―全体像を浮き彫りにしてこそ、「抜け道」を許さない解決策も出てくるからです。
この間、閣僚らを中心に不明朗な事務所費計上、使途不明金、補助金のだまし取り、領収書変造などが相次いで発覚しました。ところが、安倍前内閣から福田内閣に至るまで、疑惑を指摘された閣僚、政治家はだれ一人としてその真相を明らかにせず、疑惑政治家を抱える政党も実態調査に乗り出していません。その結果、「政治とカネ」の議論は、もっぱら支出に限定した制度論議になっています。
しかし、不明朗な支出となる大本に、収入の問題があることがこの間明らかになりました。
別表は、福田内閣発足後に発覚した「政治とカネ」の問題です。目立つのは、国や地方自治体の公共事業を受注したり、国からの補助金などを受けていた企業から献金を受けていたことです。福田康夫首相は、自らが代表を務める政党支部の会計責任者の企業・グループから総選挙の直前に献金を受けていました。
公職選挙法は、国や地方自治体と契約関係にある企業が国政選挙や地方選挙に関連して献金すること、政治家の側にも受け取ることを禁じています。対価性が明白で、行政の力をゆがめるからです。また政治資金規正法は、補助金を受けている企業は、交付決定の通知から一年間は政治活動に献金することを禁止しています。
福田首相は「国の仕事をしていたとは知らなかった」(十日の衆院予算委員会)といいますが、これは言い訳の常とう句です。安倍前内閣時に、国からの補助金交付法人から献金を受けたことが明らかになった久間章生元防衛相は「(献金は)自動引き落としをしていたので、(法人が補助金を受け取っていたとは)知らなかった」(三月八日の参院予算委員会)と企業献金の自動入金システムを理由にあげました。
税金分け取り
議員数と得票数に応じて、国民一人あたり二百五十円、年間総額三百億円以上の税金を労せず分け取りできる政党助成金は、「政治とカネ」の問題でいっそう感覚まひを生み出しています。
渡辺喜美金融・行革担当相が代表を務める政党支部は、政党助成金を使って家賃などを親族会社に支払っています。
本来、政党の活動資金は、主権者である国民一人ひとりからの寄付によってまかなわれるべきものです。そうしてこそ、はじめて政治を遂行する目線も国民に向けられることになります。
「政治とカネ」をめぐって法改定論議が焦点となるなか、企業・団体献金の禁止、政党助成金の廃止に踏み出すべきです。(高柳幸雄)
福田内閣の主な「カネ」問題
●福田康夫首相
代表を務める政党支部が、国発注の公共事業を受注している地元建設会社とそのグループから2003年と05年の総選挙公示直前に計1000万円の献金を受け取る。政党支部や関連政治団体の領収書のあて名を変造
●渡海紀三朗文部科学相
代表を務める政党支部が、国発注の公共事業を受注している建設会社から2000年、03年、05年の総選挙公示前後に計678万円の献金を受け取る
●石破茂防衛相
代表を務める政党支部が、国から補助金を受けている地元建設会社から05年に10万円の献金を受け取る
●中野正志経済産業副大臣
代表を務める政党支部が、国発注の公共事業を請け負っていた建設会社から05年の総選挙公示前日に計400万円を受け取る