2007年10月20日(土)「しんぶん赤旗」

イラク・アフガン作戦と一体

海自給油 米国防総省認める


 【ワシントン=鎌塚由美】米国防総省は十八日、日本の海上自衛隊が米軍艦艇に供給した燃料の使用について声明を発表し、「(米軍)艦艇は複数の任務につくこともある」と述べ、海上自衛隊から燃料提供を受けた米艦船が海上阻止活動だけでなく、イラク作戦やアフガン作戦を一体的に行っていたことを事実上認めました。

 声明はその上で、「不朽の自由作戦に参加する艦艇のみに提供するとの、日本政府との合意を誠実に順守していると米国政府は信じる」と述べ、イラク戦争への転用疑惑を否定してみせたものの、明確な根拠を示しませんでした。

 「『不朽の自由作戦』に日本が供給する燃料の使用について」と題する声明は、米軍艦艇に渡った燃料の追跡は「複雑な作業」だと表明。その理由として、▽海自の燃料は分割されているわけではないし、個別のタンクに分けて保管されていない、▽燃料が最初に補給艦に給油され、第二の艦艇に回された場合、追跡調査はさらに困難になる、▽艦艇は複数の任務につくこともある―と述べました。

 声明は、有志連合艦船の消費燃料総量に対して海自が供給した燃料の割合を明示。海自の供給開始からイラク戦争開戦前までは、19・6%、その後の五十五カ月間では7・3%だとしています。


解説

海自の給油燃料 米国防総省発表

「複数任務に使用」裏付け

 在日米大使館が十九日に公表した「米国防総省報道発表」は、海上自衛隊がインド洋で米艦船に給油した燃料はすべてOEF(「不朽の自由作戦」=対テロ報復戦争)に使われたことを「確認した」と述べています。政府は、「(米側の)結論は(イラク作戦への)流用、転用を否定した」(町村信孝官房長官)と受けとめています。

 ところが米側「報道発表」では、何をどう確認したのか一切示さないまま、「日本が補給した燃料を、米国艦船に給油された時点から消費されるまで、任務ごとに追跡することは…複雑な作業になる」と述べ、その理由を詳細に説明。(1)海自から供給された燃料を、ほかの燃料と分けて貯蔵してはいない(2)海自からの燃料を他の艦船へ再給油することは一般的に行っている(3)給油された艦船が複数の任務につくことがある―としています。

 確かに、補給艦の燃料タンクが目的ごとに区別されていることはありえず、他の燃料と混ざった海自の燃料の「用途を説明する作業はさらに複雑に」ならざるを得ないことは、常識で考えて理解できることです。これは、海自の燃料供給先はOEFの海上阻止活動(MIO)に従事している艦船に限るとする現行テロ特措法にも反して、イラク戦争に転用されていたとの疑惑を、米軍自身が否定できなかったことを意味します。

 米艦船が「複数の任務に就くこともある」ことを公式に言明したのも重要です。これは、海自が給油した米艦船がOEF、対イラク作戦(OIF)、海上安全作戦(MSO)といった任務を一体的に行っているとする日本共産党の指摘を、米軍自身が裏付けたものです。

 「報道発表」は、日本政府が言うように「対テロ海上阻止行動を行う艦船」に限定して給油を行うことが不可能であることを、当事者である米軍が正直に告白したものです。

 石破茂防衛相は、新テロ特措法案で「対テロ海上阻止活動」を行う艦船に限定するとした点について、国会答弁で「米国と交換公文を結んでいる」「米国が目的外使用はないと言明しているから、われわれは信じるしかない」と繰り返していますが、交換公文には何の拘束力もなく、米側の言明にも具体的な根拠は何もないことが示されました。(竹下岳)



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