2007年10月20日(土)「しんぶん赤旗」

新幹線新駅に地方債 違法

差し止めが確定

最高裁 住民「建設中止へ一撃」

滋賀・栗東


 滋賀県栗東(りっとう)市に予定されている新幹線栗東新駅建設費の地元負担に地方債(借金)をあてるのは違法とした一、二審判決を不服として、栗東市が上告していた訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は十九日、市の上告を棄却する決定をしました。これにより起債違法、差し止めの一、二審判決が確定しました。


地図

 新幹線新駅は税金のムダ遣いと訴えてきた市民原告団は同日、大津市内で会見。全面勝訴に、「住民投票を求めても、議会は否決。しかし住民の方が賢明だった。最高裁がそれを理解してくれた」と喜びを語りました。

 原告の一人で、日本共産党の馬場美代子市議団長は「地裁、高裁の起債差し止め判決で起債分削除の予算修正をしたのに、市長は再議で予算を無修正で強行した。最高裁決定をもとに市議会で当然、議論しなければなりません」と話しました。

 市民側の吉原稔弁護士は「新幹線新駅問題に終止符を打った勝訴。新駅をやめさせる完ぺきな最後の一撃です」と語り、「ムダな公共事業の財源として地方債が『打ち出の小づち』の役割を果たしてきたが、起債差し止めの初の判例が確定し、全国に発信できたことは滋賀の運動の誇りです」と話しました。

 裁判は、新幹線新駅の中止を求める栗東市民八人が、工事中に列車が迂回(うかい)する路線(仮線)工事について市が四十三億九千万円の起債を決めたのは、私企業のJR東海への駅舎寄付のためで、起債を公共事業に限った地方財政法に違反すると訴えたもの。市は、仮線は都市計画道路のために必要と主張していました。

 大津地裁は昨年九月、「道路工事と仮線工事は不可分一体という説明はいかにも無理がある」と、起債は地方財政法の趣旨に違反すると差し止めを命じ、大阪高裁も今年三月、「道路工事は後から理由付けたもの」で、起債は地財法違反として市の訴えを退けました。


解説

新駅中止運動に大きな力

起債違法 最高裁判決

 新幹線栗東新駅の建設の地方債発行は違法と確定した最高裁決定は、県民と日本共産党が共同した「新駅中止」運動に大きな力を与えました。

 栗東新駅は建設費二百四十億円。全額が地元自治体負担で、関連開発費を含めると約二千億円。在来線駅から遠く、新幹線は県内の米原駅や京都駅の方が便利。「税金のムダ遣い」と強い反対運動が続いてきました。

 これにたいして前知事や栗東市長、前県政のオール与党は、「新駅の是非は住民投票で」の直接請求をすべて退けましたが、昨年七月には新駅「凍結」を公約した嘉田由紀子知事が誕生しました。

 新駅は、知事選前に駆け込み着工されましたが中断。「地元の合意」で「推進か、中止か」をJR東海に通告する期限を今月末に控えています。

 新駅推進の栗東市長は「中止の責任は県」と主張。市の土地区画整理事業費も県に要求。知事と関係市長による新駅設置促進協議会の正副会長会議で、知事に「現状維持」を迫っています。

 このとき、最高裁は、市は違法行為を前提にしているとしたのです。

 原告側の吉原稔弁護士は「最高裁決定は、タイミングをはかったよう。損害賠償を求めるとすれば、県でなく違法の市の方だ」と指摘します。

 民間企業のJRの駅で地元負担は当然という押しつけに反対してきた運動は、大詰めの司法判断を引き出しました。

 (滋賀県・黄野瀬和夫)


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