2007年10月19日(金)「しんぶん赤旗」
安心してママになりたい
名古屋・人口増加の守山区
市民病院の産科廃止
名古屋市守山区(人口約十六万人)の住民に八月、衝撃が走りました。区内唯一の総合病院である市立守山市民病院(ベッド数二百床)が、二〇〇八年三月いっぱいで分娩(ぶんべん)を廃止すると発表したからです。同区は、名古屋市の中でも出生率第一位の人口増加地帯。それが今、“お産難民”の危機にさらされています。
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双子を妊娠している同区在住の女性(30)は、不安な面持ちで漏らします。「民間の婦人クリニックでは、多児妊娠だと分かると入院を断られました。市民病院だけが受け入れてくれたんです。私のような人は、今後どうしたらいいのか」
背景には「行革」
背景には、経営難にある公立病院の縮小・統廃合を進める国や自治体の地方行政改革があります。そのもとで〇二年に名古屋市は「市立病院整備基本計画」を打ち出しました。「市民の皆様により質の高い医療を提供する」として、五つある市立病院を中核的病院とサテライト的病院のグループに編成し、中核的病院に医療体制を集約するというものです。
守山市民病院は、東市民病院(千種区、四百九十八床)のサテライトとして九十五床に縮小。緩和ケアや慢性疾患患者の入院診療などに特化することに決まりました。外来診療は継続するものの、手術や一般入院などは東市民病院に集約されます。分娩の廃止は、計画の一端でした。
守山区には現在、市民病院以外にお産ができる診療所は三カ所ありますが、あわせて二十九床と小規模です。このまま計画が進むと、守山市民病院の年間分娩数約百七十件のほとんどが、区外の施設での出産を余儀なくさせられます。
「名古屋市は、病院の経営効率の議論しか頭にない」と批判するのは、愛知県医労連の稲葉哲久・副委員長です。
松岡洋文・元北医療生協副理事長は、地域医療の視点から整備計画の見直しを求めます。「守山区は名古屋市の北東端。本当に地域医療を考えるなら、名古屋市だけではなく隣接する尾張旭市や春日井市など、行政の範囲を越えて連携する必要がある」
立ち上がる住民
日本共産党のくれまつ順子市議は「正常な分娩も、リスクの高い分娩も東市民病院に押し寄せることになると、すべて対応できるか疑問です。名古屋市が主張している少子化対策とも逆行する」と指摘します。
整備計画を受け、守山市民病院の縮小に反対する市民団体が結成されました。〇三年に「地域医療を考え守山市民病院を守る会」が、今年八月には「安心して守山市民病院でお産をしたいママの会」が発足しました。
守る会の橋本克己幹事は「川に囲まれている守山区は、災害時孤立する可能性がある。縮小ではなく、災害医療活動拠点として充実させてほしい。市民病院は守山区の財産なんです」と力を込めます。
両団体は、計画の見直しを求める署名活動を展開。あわせて六千七百四十八人分集め、九月二十八日、名古屋市議会の梅村邦子議長に提出しました。
ママの会の代表は訴えます。「東市民病院に集約されるといっても、直通バスもない。私たちは近くの病院で家族と一緒に赤ちゃんを産めるようにしてほしいだけです」